インタビュー紹介

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並里 麻依さん

並里 麻依さん

株式会社神防社 取締役副社長
「飛び込んだ消防設備の現場を愛し、楽しみながら後進を育成する」

会社情報

株式会社神防社
【所在地】兵庫県神戸市中央区東雲通3-4-3
【事業内容】消防設備の設計・施行、点検保守、消防・防災用品販売
【社員数】78名(男性53名:68% 女性25名:32%)
(令和3年12月10日時点)

「飛び込んだ消防設備の現場を愛し、楽しみながら後進を育成する」

 消防設備の点検・工事の施工、消防・防災用品の販売等の事業を、神戸で展開する株式会社神防社。「そこまでやるか!神防社」を掲げ、高品質なサービスを徹底的に追求し、顧客満足度を超える「感動」を顧客に与えることで、成長を続けています。
 男性の職場というイメージが強い建設業界において、女性のみで構成されたメンテナンスチームを設立するなど、女性活躍を積極的に推進しています。女性活躍推進の状況が優良な企業を厚労省が認定する「えるぼし」認定をはじめ数々の表彰を受賞し、その取組みは社外から評価されます。
 その神防社の設立メンバーであり、現在は副社長として日々活躍される並里さんにお話を伺いました。

消防官に憧れて消防設備の世界に飛び込む

Q.これまでの経歴を教えてください。     

    学生時代に消防官に憧れ、試験を受けたのですが残念ながら受かりませんでした。それでも諦めきれずにいた時に、「消防設備」の仕事を見つけて、何も知らずにこの業界に飛び込みました。20歳から7年間勤務した会社では、今と同じ施工管理の職を任せていただき、消防設備の打ち合わせやCADを使った施工図を作成。そこでCADの使い方、スプリンクラー設備のシステムなどの知識を身につけることができました。
 その後、仲間5人で神防社を創業しました。数年後から従業員も増え、仕事も少しずつ軌道にのり始めました。創業から11年後に育児休業を取得。復帰したタイミングで副社長に就任しました。肩書がついてからも、私の担当業務は基本的には変わらず、今も現場に行きます。ただ、副社長に就任後、様々な場所で講演する機会をいただくことが増え、会社や業種を知っていただく良い機会になっています。

Q.大学で担当される女性活躍のご講義について教えてください。

    ゲストスピーカーとしてお声がけいただき、神戸学院大学では、中小企業の抱える課題に関する授業で、今年は企業のLGBTQの取組について考える、グループワーク形式の講義をさせていただいています。このテーマに答えはなく、学生の柔軟な発想を聞けるのは楽しいです。
 武庫川女子大学では、個人にフォーカスしていただき、女性のキャリアについて講義しています。建設業界のなかでも「色々な業種の仕事があるよ」というのを知ってもらい、この業界に少しでも興味を持ってもらえたら、との思いでお話ししています。

相手の話をよく聞いて行動で示す

Q.部下や仕事関係の方と円滑に業務を運ぶ、コツや工夫はありますか。

   まずは相手の考えていること、言いたいことをしっかりと聞くようにしています。やはり個人個人で少しずつ思うことが違うので、聞くことに注力しています。
 改まって部下の考えを聞く機会として、年に1回面談していますが、形式的な面談になってしまうこともあるので、今は人事評価制度の改定を進めているところです。より普段の話し方に近い形で、社員一人一人の希望や思いを聞く場を作っていきたいと思います。
 施工管理者の立場で工夫していることは、私どもが描いた図面をもとに職人さんが施工する際に、後戻りや二度手間がないように念を入れて打ち合わせします。これは若手社員に教えるときも気を付けていることです。私が「主語がなくても伝わる話だ」と思っても、実は伝わっていなかったことはよくあります。それを念頭において「同じことを二回伝えたら、言葉くらいは憶えてくれるかな」くらいの気持ちで、丁寧に伝えるように気をつけています。

Q.女性ならではの苦労はありますか。

    この業界はまだまだ男性主導ですが、女性活躍の声が上がりだしてから、大手の建設会社の現場では、女性の設計職や施工管理者が増えてきました。女性ならではの苦労と言えば、建設現場のトイレ問題ですね。今は昔に比べてかなり改善されて、男女別にはなっているのですが、施錠できないトイレがあります。現場では、たとえ女性用と書いてあっても平気で男性に使われてしまいます。最近は番号式の女性用トイレなども見かけるようになってきましたが、やはりトイレのトラブルはよく耳にします。
 あとは力仕事です。どれだけ頑張ってもそこはできない、ちょっとのことで職人さんに来てもらわないといけない場合があります。「女性にはできひんやろ」と思われて、最初から話もしてもらえないこともよくありましたが、そういう時は、ひたすら行動で示して認めていただけるよう心がけています。
 神防社は、事務職で入社しても、希望があれば技術職への転向が可能です。希望者は、まず現場に連れて行きます。当社には、さまざまな仕事がありますので、本人が楽しく働ける職種に就いてほしい、可能性を後押ししたいと考えています。女性だけのメンテナンスチームにも力を入れており、レディースマンションや女子寮などの設備点検は、女性に安心していただくという点では、ニーズは大きいと考えています。

ポジティブに話し合って分担する

Q.家庭の両立やモチベーション維持の秘訣について教えてください。

    家事や育児はできる方ができるときに、分担すればいいと思います。両立にはお互いの理解が必要不可欠です。そのためには、夫婦で普段からよく話すことが大切だと思います。これから若い世代が主流になると、男女平等や両立の考え方がもっと変わっていくことを期待しています。
 くじけそうになることもあるのですが、悩む時間がもったいないので、なるべくポジティブになるというか、考えないようにしています。また、趣味のスポーツ観戦に打ち込みます。バスケットボールやサッカー観戦が大好きです。私は小学校から10年間バスケ部でしたが、何度も挫折しては練習して克服、を繰り返しました。そこで精神面が鍛えられたのかもしれません。

Q.これから女性リーダーになる方や管理職の方にメッセージをお願いします!

    管理職というのは間に挟まれる立場。部下から言われるが、自分は吐き出すところがないといった環境に置かれるときもあるでしょう。でも、自分がその立場に選ばれたということは、そこで立ち回れる技量があると思われたからこそ。役職に就いたと気負わず自分のスタイルを持ってほしいと思います。
 また、迷ったときや深い悩みも、一生の時間軸で考えてみると、迷っている時間なんてほんの一瞬です。そう考えれば、悩みがちっぽけなことと思えてきます。この一瞬を頑張ったらどうにか前に進めると思う、考え方の転換です。
 人生は一回きり。可能性はなるべく狭めず、知らないことでもやってみてください。誰でも最初は初心者です。「細かいことにこだわらず、まずは飛び込んでみる」「同じ一生なら楽しい方がいい」をモットーにまずはやってみましょう。