インタビュー紹介

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尾崎 有希枝 さん

尾崎 有希枝 さん

株式会社 神戸デジタル・ラボ
経営戦略本部
情報企画部 部長
品質管理・人材育成 統括
自分の中にある思い込みに気づくこと

会社情報

株式会社 神戸デジタル・ラボ
【所在地】神戸市中央区京町72番地 新クレセントビル
【事業内容】ITコンサルティングサービス、システム開発・運用・保守、Webプロモーション、クラウドサービス、スマートデバイスアプリ開発、情報セキュリティサービス、先端技術開発
【従業員数】155人(女性50人、男性105人(2018年12月1日現在))

自分の中にある思い込みに気づくこと

 神戸デジタル・ラボ(KDL)は、1995年に神戸で設立し、「ITで未来を創る」をスローガンに、WEBビジネスを軸に情報システム開発・運用・保守サービスのほか、VRやIoT、データ活用などの先端技術や、関西有数の情報セキュリティソリューションを提供しています。同社では、社員の仕事と家庭の両立支援に向け、フレックスタイム制やテレワーク、法定以上の育児休業制度等様々な取組を推進しています。
 「女性であっても仕事は続けていきたい。」という強い思いから同社に入社された尾崎さん。入社後、結婚・出産・育児を経験されながらも、全力で仕事にも取り組んでこられ、今では社内唯一の女性部長としてご活躍されています。そんな尾崎さんに、これまでの経歴や苦労、女性へのメッセージなどについて、お話しを伺いました。

女性であっても仕事は続ける。辞めるつもりはなかった。

Q今までの経歴を教えてください。

 新卒で入社した会社は、パッケージソフトを開発する会社でした。私は、当時から仕事は長く続けるつもりで、辞めるつもりはありませんでした。最初の所属の上司が女性であったこともあり、そんな自分の気持ちを分かってくれると思っていました。しかし、「女性だから」という理由で業務からはずされたことがありました。上司なりの気遣いであったとは思いますが、当時の私にとっては「上司は自分の気持ちを分かってくれていない。」と感じる出来事になり、入社後2年で辞めることを決意しました。
 その後、今の会社にチャレンジしました。面接で社長と副社長に前の会社を辞めた理由について話すと、「うちではそんなことはしない。男女の区別なく、仕事をやってもらう。どんどん活躍して欲しい。」との言葉をいただいたので、入社を決めました。入社当時は、主にお客様の会社での業務(客先常駐案件)に従事してきました。個人やチームで、様々な会社に行き、自社にはない雰囲気・価値観を身近に感じながら働くことは刺激的でした。また、当時は自社の上司に女性は少なかったので、他社で長く働いてこられた女性社員の先輩と関わることができたのも、貴重な経験でした。

制度利用者がいつまでも「マイノリティ」ではいけない!

Q仕事と子育ての両立はどのようになされました?

 私は今の会社に入社してから、結婚、妊娠、出産を経験しました。産前産後・育児休業後職場に復帰した際は、自宅が会社から遠かったこともあり、上司の配慮で、当時の会社には制度としてはなかったテレワークを特別に認めてもらい、私は自宅と自宅近くのお客様のところを行き来しながら働かせてもらいました。今は子どもも成長し小学生になりましたが、時短勤務を活用しながら部長の職を務めています。
 また、仕事と家庭を両立していく上で、夫の協力は大きいです。夫は私と同じように「男だからこう、女だからこう。」という考えを持っていないので、お互いの得意不得意に合わせて家事や育児の役割分担を行ってきています。そんな夫は、「同志」のような存在だと思っています。自分の経験からも、仕事を続けていく上で、家族や職場のサポートは大切だと実感しています。

Q両立されてきた中で、何か苦労されたことはありますか?

 仕事と家庭の両立は、気持ち的にしんどいことは色々とありましたが、苦労とまでは思わなかったです。しかし両立のために、テレワークや時短勤務を経験してきて実感したことは、それらの制度を利用しながら働いている人は、「マイノリティ」であるということです。
 例えば、在宅勤務中、テレビ電話を用いて会社にいる人と一緒に会議をしていた時に、途中でその場にある資料を指して会話がなされても、その場にいない私には理解できませんでした。しかし、それは私側にしか分からない問題だったので、分かるように説明して欲しいとは言い出しづらかったです。また、私の周りの時短勤務をしている人たちの中には、職場の皆が働いている最中に自分だけが早く帰ることに気が引けてなのか、静かにそっと帰るようにしている人もいます。私自身も同じような思いもありますが、なるべく卑屈にならないようできるだけ元気に「お先に失礼します!お疲れ様です!」と言ってから、帰るように心がけています。
 テレワークや時短勤務等を利用している人が職場のマイノリティから脱却するためには、「当事者」を増やす必要があります。そこで、私の部署に限ってですが、社内の情報システムを担っている部門であることから、災害時の業務継続の検証という理由で、メンバー全員がテレワークを経験しました。実際に経験し、「当事者」になったことで、何が問題になるのかを皆で認識することができました。
 育児に限らず、介護や病気・怪我等が理由で、在宅勤務や休暇の取得を選択しなければならない状況は誰にでも起こりえます。そんな時に働き続けられる環境でなければ、この会社で働く意味がないと思います。当事者が増え、マイノリティではなくなっていくことで、制度が利用しやすい雰囲気になるのではないでしょうか。現在マイノリティの立場の人達が働きやすくなること=社員全員が働きやすくなることだと思います。

Qそのような思いを会社に発信するために、やはりそれなりのポストは必要だと思われますか?

 はい。やはり、自分の思いを会社に発信していくためには、ある程度の役職は必要だと思います。今年で勤続20年ですが、入社後リーダー、マネージャーを経て、2016年10月から部長になりました。役職についたからなのか自分自身の成長なのかは分かりませんが、時間の経過とともに周りの反応が変わってきた実感があります。私自身、部長になってから、自分が成長していると実感できる機会が増えたと思います。
 当社でも、今後の女性管理職の育成は大きな課題の1つになっています。上司から、「女性に『リーダーやマネージャーをやらないか』と声をかけても、断わられたから仕方がない」と聞くことがあります。しかし、そこで断られたから仕方がないとあきらめるのでなく、そこから女性に挑戦したいという気持ちにさせるのが上司の仕事だと思っています。また、会社にも、社員にも、「リーダーになるのは男性」というのが当たり前の意識としていまだに残っているように感じます。今後女性のリーダー、管理職を増やしていくためには、役職や性別に関わらず、「上に立つのは男性」という潜在意識が自分の根底にあることに気づく必要があると思います。

「尾崎さんがいてくれたから」の言葉が励み

Q充実していると実感するときはどんな時ですか?

 部長になってから、すごく気持ちが落ち込んでしまった時に、友人から「コーチング」という手法を紹介してもらいました。コーチングとは、専門的な知識・技能を持ったコーチとクライアント(コーチングを受ける人)との会話によって行われます。クライアントは、話したい内容を自由に話し、コーチは質問や助言によって話の内容を掘り下げていきます。そうすることで、クライアントは自分でも気づいていない自分の価値観を知ることができます。私も実際にコーチングを受けて物事のとらえ方が変わったことで、気持ちがとても楽になりました。その後、自分と同じように悩んでいる人を助けたいという思いから、マスターコーチの認定をもらうための研修を修了し、今は認定のための経験を積み重ねているところです。職場の上司や部下に対してコーチング的な関わり方をすると、普段コミュニケーションがうまくとれていないために、お互いの認識が全く異なるという事例が多くあります。コミュニケーションの質を上げるだけで、人間関係の質も仕事の質も上がると思います。その手助けのためにも、社員に対してコーチングを行っているのですが、実際に受けてもらった方に大変喜んでもらったときはやっていてよかったと思います。
 また、「パパママランチ」という取組も行っています。私が自分の育休復帰後に、育休から復帰してきた女性社員に個別に声をかけランチに誘ったのがきっかけです。正直最初は誘った人たちが皆参加してくれるのかどうかが不安でしたが、当時一緒にコーチング研修を受けていた方から「たとえ1人も来なくても、会社に尾崎さんのような気持ちを持っている人がいることを知るだけでも支えになる人がいますよ。」といった声をかけていただき、勇気づけられました。定期開催にしたほうがこちらからも声かけしやすいので、昨年の8月から毎月第3水曜日に実施しています。私自身、仕事で保育園の迎えが遅かったこともあり、保育園ではママ友がほとんどできませんでしたが、相談したいことや話したいことはたくさんありました。ランチ会は参加自由にしているので、困った時に相談できる場になったらいいと思っています。また、仕事復帰前の不安な気持ちを少しでも和らげてもらうため、育休中の人にも参加の呼びかけをしているところです。
 このような取組みを進め、色んな人との関わる中で「尾崎さんがいてくれたから」と言ってもらえる場面が増えてきたと思っています。その言葉のおかげで、今までの自分の経験は無駄ではなかったと実感することができました。また、これを続けていくことで絶対に会社が良くなると思っていますので、今後も頑張っていきたいです。

何でも1人で我慢しなくていい!

Q女性の皆さんへ伝えたいことはありますか。

 私は、「我慢しなくていい」と伝えたいです。もちろん、自分が生きたいように生きるためにも、頑張らなくてはいけないことはありますが、何でも1人で我慢して頑張り続ける必要はないです。今の若い人の中には、「辛くても耐え続けなければいけない。」「自分ができることはここまで。」などと色々な思い込みを持っている人が多いように感じます。
 自分の思い込みに気づくためにも、最近私は、今まで自分が行ったことのない場所に行くように心がけています。あえて自分の普段いる環境とは異なる環境に身を置いて色んな価値観に触れることで、自分の思い込みをなくすことができると、違う世界が見えてきます。もちろん初めての場所には多少ストレスを感じますが、それ以上に自分にとっても得るものは大きいと思います。皆さんもぜひ、色んな場所に行って色んな経験をしてみてください。そして、自分自身の思い込みを少しでも払拭し、いろんなことにチャレンジし、仕事でもプライベートでも自分の人生を楽しんでほしいと思っています。
 そして、性別を意識しなかった子供の頃を思い出してみて欲しいです。性別なんて関係なく、男性にできる役割は身体能力に関するもの以外、女性にだってできるのです。マイノリティであった経験は、経験したことのある人にしかないリソースです。そのリソースを持っているからこそできることもあるはず。一緒に頑張りましょう。

最後に…

 インタビュー後に尾崎さんから、「今までロールモデルとしてインタビューを受けてこられた様々な会社の女性の皆様は本当に素敵な女性ばかり、実際にお会いすることができる場があれば嬉しいです。」との、貴重なご提案をいただきました。その場が実現できるよう、頑張っていきたいと思います。