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2017/08/09

「女性公務員として働くこと」のパネルディスカッションを開催しました!

 平成29年7月6日(木)、神戸学院大学にて、同大学現代社会学部清原桂子教授が担当する「男女共同参画研究」の授業の一環として、「女性公務員として働くこと」と題するパネルディスカッションが開催されました。公務員として活躍する4名と、参加した約50名の学生との間で、活発な質疑も行われました。

・コーディネーター 柳瀬 厚子 兵庫県理事(地域創生・女性担当)

・パネリスト 杉町 純子 明石市議会議事課長

       梶本 修子 兵庫県農政環境部環境創造局環境政策課長 

       大西 晶子 兵庫県丹波県民局県民交流室県民課職員

                            (以下敬称略)

 

Q 公務員になった動機、やりがいは?

(柳瀬理事)

 3人の方に公務員になった動機ややりがいについて、子育てされながら管理職としても活躍されているお2人には、仕事と家庭の両立についてもお話していただこうと思います。それでは、公務員になった動機ややりがいについて、大西さんからお話いただきたいと思います。

(大西職員)

 私は入庁してから、今年で4年目、勤務地は2か所目になります。新人で本庁の漁港課に配属となり、2年間働きました。そこでの主な業務内容は、港に防潮堤等のハード設備を作る事業の補助金を交付する事務を行いました。国や市町とのやりとりが多く、公務員試験でも法律の勉強はしましたが、実務の中で様々な法律に触れさらに勉強になる2年間でした。

 公務員は2、3年毎に新たな部署に異動になるため、様々な仕事ができることがやりがいの1つだと思います。3年目からは丹波県民局に異動になり、今年で2年目です。昨年は10年に一度のふれあいの祭典のイベントを主に担当しました。丹波県民局の職員への説明会をはじめ関係者への資料作成や説明の機会が多く、丹波では、地元の県民の方々と関わる機会が増え、県民の方と近い位置で仕事が出来ることを実感しています。

 ふれあいの祭典以外の主な業務として、移住事業を担当しています。ここ数年兵庫県全体で見ても、人口減少は進んでいますが、都市部への人口流出により丹波地域でも同様に人口減少が進んでいます。そうした中で地域の魅力を発信し、いかに地域に移住してもらえるかを考えるのが移住事業です。すぐに結果が出るものではないと感じていますが、決まったやり方があるわけでもないため、どうすれば移住が進むかを考えながら仕事ができることにやりがいを感じます。

 公務員を目指したのは、大学生2回生の終わりから3回生の頃です。公務員に魅力を感じたきっかけは、大学2回生3月の確定申告の時期に、税務署でアルバイトをしたことです。そこで働かれていた女性職員がとてもかっこよく、そのような女性になりたいと憧れを持ったのが最初です。ずっと働き続けられる職業を持つことを念頭に置いた時、働き続けるには、何か資格を持つ、もしくは公務員になるのがいいと思っていました。そんな中で、興味のある公務員を目指しました。公務員試験の勉強をして、公務員を受けたので、民間企業の就職活動はしていません。

大西職員

(杉町課長)

 平成10年に明石市役所に入りました。最初は国民健康保険課に配属になり、市民の方が直接来る窓口がある部署にいました。その後、市議会事務局、市政の総合的な企画・調整を行う政策室を経て、この春に市議会事務局に戻り、議事課長をさせていただいています。

 市の予算や市の条例の制定等には必ず議会の議決が必要になります。議事課は、そういった議決を行う議会の本会議や委員会の運営全般を担っています。直接市民と接することは少ないですが、市民生活を守っていくためには必要不可欠な仕事をしていると認識しています。

 公務員になった動機ですが、法曹界に興味があったので、法学部に入りましたが、司法試験のハードルの高さに限界を感じ、法曹界へのチャレンジは早々に諦めました。ただ、民間企業に入って利潤を追求するというよりは、人のために何かする、子どものために何かするといった社会的利益のためにできる仕事をしたいと考えており、公務員になることを漠然と考えていました。

 公務員を思い描いた一因としては、父が公務員をしており、その影響もあったと思います。私が大学3回生の時に阪神淡路大震災が起こり、父は早朝から深夜まで、身を粉にして復興に奔走していました。そのような姿を見て、大変だなと思う反面、こういう仕事ができることは尊いことだと感じました。また、ちょうど就職活動をする時に震災が起こったこともあり、景気の悪化とともに民間企業からの求人が激減しており、公務員試験を受けました。

 公務員としてのやりがいですが、市役所の仕事は、直接市民の方と接することも多く、様々な説明や無理なことをお願いしないといけない場合もあり、コミュニケーションをたくさん取る必要があります。文句を言われる方もいらっしゃいますが、ありがとうと言われたり、分かりやすかったよとお礼を言われると素直に嬉しく感じます。

 また、以前の職場でお世話になった方と別の場所で新しい仕事をすることもあり、そのような人と人との繋がりが広がっていくことは嬉しいことです。市民の方に説明を分かってもらえない時に、自分の至らなさを感じることもありました。市役所は市民の方に1番近いので、クレーム対応等大変なこともありますが、様々な事を日々行っていく中で誰かのお役に立てたと感じる瞬間は、とても充実感があります。

 役所の仕事は市民の生活に直結し、困りごとにきっちり対応しないといけない、間違えることができない仕事ですので、管理職となり、以前よりもさらに日々責任を感じています。結果を出さなければならない部分もあります。重責ではありますが、自身の判断で考えていくということについては、やりがいも感じています。緊張感を毎日感じていますが、頑張っていこうかなと思っています。何をやるにも決断力と覚悟がいると感じています。

 

杉町課長

 (梶本課長)

 平成元年に採用され、現在は環境政策課長をしています。環境政策課は直接の事業はあまりやっていません。環境部門のトータルのコーディネートをしていく、環境基本計画という環境の総合計画をもっていまして、環境部門の事業がちゃんと進んでいるかチェックしています。あまり現場がない仕事です。

 公務員になった動機を大きく考えると、「どこで働くか」と「何をするのか」の2つの論点があったと思います。東京で大学生活を送り、就職する時に東京は自分が生きていくのにちょっと息苦しさを感じたこと等もあり、出来れば自分のふるさとで働きたいと感じました。その段階で選択肢は狭まるわけですが、場所は関西、できれば兵庫県で、何をしようかと考えました。民間企業の話なども聞いたのですが、利潤と公益を天秤にかけることなく、純粋に社会のため、人のために働ける公務員という職業はすばらしい職業だなという気持ちが強くなり、公務員を志しました。

 入庁して約30年、振り返ってみますと、地方公務員は、国家公務員のような省庁採用と異なり、いわゆる何でも屋です。概ね2、3年毎に職場が変わり、県の総合計画を作っていた時期もあれば、男女共同参画の条例を作らせていただいた仕事もありました。他には福祉関係で障害者を支援する仕事、生涯学習で地域のリーダーを育てていくような仕事、青少年育成関係のこともやりましたし、職員のトレーニングをする部署にもいました。3月までは消費生活課に所属していましたが、この4月から環境政策課に配属となりました。

 異動のたびに1から勉強することになります。分野は多様ですけれども、行き着くゴールは同じところです。公共の福祉という言葉がありますように、県民の皆さんが本当に豊かで幸せな暮らしを送るにはどうしたらいいのだろうというゴールを持っているのは、どこのセクションにいても同じです。それはすべての職員が共有しているゴールで、そういうゴールをもって働けるということを思えば幸せな職業人生を選ぶことができたのではないかなと思います。

 現場がないこともあるということを冒頭に申し上げましたが、県の仕事というのは市町さんの仕事と比べると、直接県民の皆さんと接することが少ないセクションが多いです。そこでどういうやりがいを感じるのかという話があります。社会学の分野で言われる、「おぼれる赤ん坊のメタファー」というのを聞かれたことがありますか。簡単に言うと、ある旅人が川沿いを歩いていると、川の中に赤ん坊が溺れているのを発見します。旅人は必死になって赤ん坊を川から引き上げます。ようやく岸に着くと、また赤ん坊が溺れているのを見つけ、助けます。また帰ってくると赤ん坊が溺れています。旅人は赤ん坊を救うことに必死で、上流で赤ん坊を投げ入れている人がいることに気が付いていません。これは、問題と構造のメタファーと言われ、どんな問題にも必ずそれを生み出している構造があり、そこを押さえて解決していかなければ、問題は次々と起こるということです。公務員というのは、目の前の赤ん坊を救うことも大事ですが、それと同時に、それを生み出している構造を考えて、そういう問題が起こらないような制度や仕組みを作ってくことが1つの使命です。

 そんな仕事が頻繁にあるわけではないですが、自分にとっては、興味深い分野だと思っています。ただ、そういう分野は、県民の方からは、見えにくいので、やっていることが評価、感謝されないことが多いです。私の入庁当時の貝原知事が、「県土の一木一草に対して責任を負う立場にある」とおっしゃったことがあります。私はその言葉を新任職員の頃に聞き、今も大事に思っています。そういう思いを共有していることが、私達の職務を支えています。時々思い出して、前に進んでいます。

梶本課長

Q 大西職員へ質問

(柳瀬理事)

 働き続けるために公務員を選択されたと思いますが、強い動機等はありますか?

(大西職員)

 出産、子育てをしても自立して生計を立てたいと思っていました。私の場合、両親が自営業だったということもあり、しっかり生計を立てるという部分では、職業にも大きく左右されるということを親からも感じたこともありましたので、しっかり考えて生きていかないといけないと感じた部分もありました。

(柳瀬理事)

 改めてこういうことを聞かせていただいたのは、今の若い人は意外とそのあたりが曖昧になっているとお聞きしたためです。私自身は保健師として兵庫県に採用され、健康福祉の仕事、県民生活に関連する仕事、県民局長として地域の総合政策に携わり、だんだん仕事自体が広がっていきました。私が仕事をしたいと思ったのは、結婚をしても、子育てをしても仕事を自立してやりたいという思いが強かったからです。私の年代は資格を持つか、学校の先生か、保育士かそういう意味で看護師、出来たら病院ではなく、地域で仕事をしたいと思っていました。今、30数年経って今ここにいます。今のお話を伺ってこれから皆さんも考えてもらえればと思います。

Q 杉町課長へ質問

(柳瀬理事)

 市役所では直接市民の方と接することが多く、文句を言われる場合もあるとのことですが、クレーマー等への市の対策はあるのでしょうか。

(杉町課長)

 一定限度を超える人に対する不当要求に対しての研修、どういう風に応対すれば相手を怒らせることなく説得することができるかというようなクレーマー研修等を受けます。不当要求対策としては、明石市役所では、明石警察の署員さんに安全担当の課長として来ていただいています。よっぽどひどい人がいる場合は、警察と連携することもありますが、そこまでの事例に至らない場合は、自分達で対応します。議会の場合も案件によっては、警察の方と連携を取り対応します。

Q 梶本課長へ質問

(柳瀬理事)

 仕事をする上で大変だったこと、苦労されたことはありましたか。

(梶本課長)

 大変なこと、苦労することはいつもですね。課長級になり今年で3年目ですが、何から何まで初めてのことが多く、一つずつ積み上げていきます。自分がする判断の重みをひしひしと感じることもあります。

 課長級になると職員さんをお預かりする立場になります。それは、県民の皆さんから「この職員さんを活かしてサービスを提供してくださいよ」という意味でお預かりしていますし、職員も家族を持つ家庭人という側面もありますから、「健康でいきいきと働けるようにしてくださいよ」という意味で、ご家族からも預かっています。そのためには、一人一人の顔を見ていないといけません。管理職になってからも日々新しいことに苦労し、努力を積み重ねています。

Q 仕事と家庭生活の両立

(柳瀬理事)

 仕事と家庭生活の両立をどうされているかお伺いします。

(杉町課長)

 明石市役所においては、育児休業は、子どもが3歳になるまで取得可能です。また、子どもさんが小学校に入るまでは時短勤務が可能ですので、そういった勤務形態で働き続けている職員もいます。最近は、晩婚化が進んでいますので、育児をしながら、介護をしないといけない人も多くなっており、最近は、介護についての制度も整ってきました。介護休暇は6か月間連続して取れます。今後はこういった問題がもっと出てくると思います。そのほか、昨年4月からは、配偶者が海外に赴任する場合に3年以内であれば、職場に籍を置いたまま休業することも可能になりました。

 育児休業は、男女ともに取得可能ですが、女の人が取る率が高く、ほぼ100%取られます。最近は3年取れるようになりましたので、保育園の入所時期を考えて子どもさんが1歳になった次の4月から復帰を目指される方が多いです。男性にも育児休業を取る方がおられますが、1%程度で低い状況です。男性も女性と同じように育児をしたいという方もおられますので、育児休業を取りやすい環境作りが大切だと思います。

 かつて、1年間育児休業を取った男性職員がいて、当時は色々な反響がありましたが、彼も今は課長になっていますし、時間が経ってしまえばそんなことも忘れられてしまいます。育休を取り、育児をすることは役所の仕事をする上でプラスになると思いますし、彼も貴重な時間であったと言っていました。

 私自身、初めて保育園に子どもを預けた時等、働き続けるという自分の選択が正しかったのかと思うこともありましたが、パートナーや母にサポートしてもらったことが大きかったです。仕事と家庭を両立しないといけないと思うとしんどいので、あまり意識せずにやってきました。疲れた時は、家事も無理をせずやれることをやりました。子どもは何歳になってもそれぞれの年齢に応じて違った形で手がかかりますので、子育てには終わりがなく、悩み続けますが、仕事をしていることで、気分転換が図られている部分もあります。

(梶本課長)

 私の生活は仕事と育児と介護(両親への支援)の3つの顔があります。これからは男性と女性を問わず、仕事だけをしていればよいという時代は多分来ないと思います。誰もが当たり前のように様々な役割を担っていく時代が来ますし、そうでないと人口減少社会を乗り切れないと思います。家事育児については同業の夫とシェアをしています。「出来る人が、出来る範囲で、出来ることを」がモットーです。役割分担は決めず、それぞれが責任をもってやっていこうという了解の元に行っています。

 仕事の面では、子どもが小さい頃には地方機関にいたこともあります。自分で時間をマネジメントしやすい面があるからです。今もですが、基本的には残業はできない、しないということで、いかに時間内で効率的に仕事をこなしていくかということについて、20年近く腐心をしています。2回の育休を取ったこと、残業を出来ないことなどがキャリアにとってはマイナスになったという評価をする方もいらっしゃると思いますが、マイナス面ばかりではなく、自分にとっては非常にプラスの面が多かったです。人間として辛抱強くなりましたし、マネジメントのスキルも高まったと思います。何より子育てには仕事にはない魅力がいっぱいで、こんな面白いことを味わわずにきたら、もったいないことになっていたと思います。苦労もありましたが、いろんなことをできたのは良い経験でした。

 マミートラック(お母さんコース)という言葉を聞かれたことがあるかと思います。かつて、子どもが生まれたらあまり多忙ではない子育てと家庭の両立ができるような職場でやっていきましょうというようなことを言われていた時代もありました。

 しかし、これからは、男性女性を問わず、この時期は子育てを重点化する、この時期は仕事に邁進するという風にあちこちに重点を置きながら自分のいろんな生活を両立する生き方が望ましいのではないかと思います。キャリアは決して一本道ではなく、いろんな脇道もありますし、見えなかった道もいっぱいあります。最後は自分が納得できるように家庭生活と職業生活のバランスを持ってもらえればと思います。

Q 公務員を目指す後輩へのメッセージ

(柳瀬理事)

 それでは、最後に公務員を目指す後輩達へメッセージをお願いします。

(大西職員)

 ゼミやサークル等で、いろんな分野の人と同い年だけでなく、先輩等幅広い人年齢の方とのコミュニティを作っておくことが大切だと思います。社会人になり、悩み事や壁にぶつかったとき支えてもらえる大切な存在になると思います。

(杉町課長)

 公務員になりたい人には、人と人とのつながりを大事にすることが必要だと思います。学生時代には、臆することなく色々なことにチャレンジし、様々な場面で積極的に人とのコミュニケーションをはかって、経験を自分の中に沢山蓄えて欲しいなと思います。

 就職活動をする上では、面接で自分をよく見せようと誇張しがちになりますが、結局面接官には見透かされてしまうので、自分らしさを出せるよう心掛けるといいと思います。そのことによって自分らしく働くことができる場を見つけてほしいと思います。

(梶本課長)

 1つは、人の役に立つのは素晴らしいということを最初の方に言いましたが、皆さんはこれまで、いろんな能力をもって育ってこられて、いろんな努力をされ、いろんな成果を得てこられたと思います。そうした力をもっぱら自分のために使うのではなく、誰かのために使おうと思えるような人になって欲しいと思います。

 もう1つは、若いうちにできるだけ多くの本を読み、教養を高め、見識を広げてください。年をとればとるほど教養や見識が求められます。また、もし公務員になられるならば、常に人の幸せとか豊かさはなんだろうと考えることが求められますが、自分の中にきちんとした見識がなければそれを追求することは難しいです。そうした見識を支えるのが教養であり、教養をはぐくむために読書は不可欠です。そのためにも、たくさんの良い本を読んで欲しいというのが私からのお願いです。

学生との質疑応答

 

Q 公務員をめざしていますが、県庁と市役所の違いとそれぞれの魅力はなんですか?

(杉町課長)

 県の方が幅広い分野の仕事があります。ただ、自分がその仕事がやりたいと思って入ってもやれないこともあります。市役所の方は、直接手続きに来られることが多いので、市民の方とのつきあいは多いです。一長一短はあります。県だと、転勤は全県になります。市役所は地域内に限られますので、その地域が特に好きというような気持ちがあれば、そこに集中してもいいのかなと思います。

Q 男性の育休について、制度はあっても実際にとりにくい風土があるといったことはありませんか?

(杉町課長)

 育児休業を取ることによって制度上不利益を被ることはありませんが、若い男性の声を聞くと取りづらいという人もおります。これから男性も育児休業を取りやすい風土を作っていかないといけないと思っています。

Q これからさらに大きな課題になってくると思われる介護休業について、制度としては少しずつ改善されてきていますが、取得は進んでいるのでしょうか?

(柳瀬理事)

 県の方でも介護休暇は設けています。子育てに関する休暇・休業は結構取られていますが、介護はまだそこまでいっていない状況です。介護の方は、長期的にやっていかなくてはいけません。介護保険のサービス等を多用しながらやっている状況です。子育ての時は今すぐにやらないといけないですが、介護の方はある程度目処をつけてやっていけます。まだまだこれから必要な時期になってくると思います。

柳瀬理事