インタビュー紹介
伊藤 妙子さん
西芝電機株式会社
経営企画部情報戦略担当グループ長
「プロジェクトに参加しないか」上司の言葉が、後押しに。
会社情報
西芝電機株式会社
【所在地】姫路市網干区浜田1000
【事業内容】製造業
【従業員数】660人(女性70人、男性590人(非正規含む、平成29年3月時点))
「プロジェクトに参加しないか」上司の言葉が、後押しに。
東芝のグループ会社として昭和25年に創業以来、確かな技術力を基盤に、発電・産業システム、船舶用電機システム等において多くの製品を開発・製造し続けている西芝電機株式会社。
男性中心のイメージが強い製造業界において、同社の情報戦略担当グループ長を務める伊藤妙子さん。育児と両立しながら、情報システムの業務ひと筋で活躍してこられた経歴や、働く女性へのメッセージなどについて、お話を伺いました。
育休をプラスに
Q これまでのご経歴と印象深いお仕事について教えてください。
経営情報学の知識を活かして、地元企業で情報管理の仕事をしたいと考えていたところ、先輩からの紹介もあり入社しました。
入社時は「OA化」が進展しつつあった頃ですが、その後のインターネットやウインドウズの普及等、IT環境が目まぐるしく変遷していく中で、情報システムひと筋にやってきました。
印象深い仕事としては、数十年に一度の大規模な社内基幹システムの更新プロジェクトに参画させいただいたことです。
当時は、育児のために毎日定時で帰宅していましたが、プロジェクト立ち上げにあたり、上司から指名され、「メンバーになったからには特別ではない。残業もしてもらう」と言われました。プロジェクトの一員として認められたことを実感し、意気に感じたことを憶えています。
システムのテストは24時間体制で行いますので、夜勤も含めメンバーが交代で業務にあたります。夜勤明けに公園で子どもと遊んだことも、今では良い思い出です。
Q 仕事と家庭の両立で工夫したことは?
夫も同じ会社なので、仕事の状況や家庭の役割分担については、無理なく理解を得ることができました。保育所への送り迎えは夫婦交替でするなど、出来るだけ自分たちの力でやろうと決めていましたが、時には実家の親の力も借りながらなんとかやりくりしました。
育休を2度取得しましたが、1度目は心の準備なく育休期間に入り、育児に追われる中で、復帰後に両立できるか、とても不安に思いました。しかし、将来や仕事のことをじっくり考える時間を持つことができたことは、決してマイナスではなく、「プラス」だと捉えるようになりました。また、上司とマメに情報交換することなどで復帰に備えました。
この経験を活かし、2度目の育休取得の際は、「休むまでにこの仕事をやろう」「復帰後は、こう仕事を進めよう」とさらに前向きに考え、復職後の連携もスムーズに行うことができました。
Q 苦労したことは?
子どもがよく熱を出し、看病のために急に休むこともありましたので大変でしたが、危機感をもって仕事に取り組む習慣が身につきました。常に前倒しで仕事を進めるとともに、業務環境の整理や標準化を心がけました。その結果、「自分しかできない・分からない」仕事をなくすことにつながり、急遽誰かに引き継ぐことになっても対処することができました。
また、子どもは小さな時だけ手がかかるのではなく、中学生ぐらいの時期もとても大事だと思います。向き合う時間が思うようにとれず、すれ違うことも多く、葛藤したこともあります。
「機嫌ようしとう?」の声に支えられ
Q 管理職への昇進についてはどのように受け止めましたか?
管理職の打診は思いもよらないことでしたが、まず、家庭との両立の不安から、「私にできるだろうか」と感じたことを憶えています。
当時の上司からは、「今までどおりやればいい。管理職になったからといって何も変えなくていい」と言葉をかけていただき、「それなら」と考えることができました。実際は、仕事の範囲が増えましたので、「今までどおり」というわけにはいきませんが(笑)、この言葉が背中を押してくれたと感じています。
Q 管理職になってよかったことは?
管理職になって、視野が広がりました。それまでは、目の前の仕事をこなすことしか考えられませんでしたが、「会社をよくするためには」「業務を改善するためには」等、大きな視点を持って仕事に取り組む意識が身につきました。
仕事の関わり以外でも、多くの方に支えていただいていることを実感しています。例えば、社内の子育てを終えた先輩ママさんからは、会うたびに、「機嫌ようしとう?」と播州弁で声をかけていただき、「大丈夫!」と返事したり、子育ての悩みを聞いてもらったりすることもありました。なんでもない言葉ですが、とても温かく胸に響き、今でも大切な言葉です。
Q 管理職として部下への対応で心がけていることは?
モチベーションを上げるような対応です。
育休明けの女性社員の業務配分を検討する際、私自身の経験から「負担になる仕事はさせられない」と提案したところ、上司からは、「彼女はそれを望んでいるのか」と問われました。話をしてみると、彼女の希望は「できる限り仕事をがんばりたい」というものでした。同じ立場であってもそれぞれに考えは異なり、自分の経験や価値観がすべてではないと痛感させられました。
頑張り過ぎずに、頑張ってほしい
Q 今後の目標などは?
情報の重要性の高まりに応じて、日々進化していかなければと思っています。
さらに向上できるよう、人との出会いを大切にし、自分にないものを吸収していきたいと考えています。これまで、育児との両立に配慮いただきながら、やりがいある仕事のチャンスを与えていただいたことに感謝し、この会社をより良くすることで、恩返しをしていきたいと考えています。
Q 女性の活躍への期待をお聞かせください。
昨年、社内研修で若手女性社員と接する機会があり、皆意識を高く持ち、仕事に真摯に取り組む様子が伺えました。当社はまだ男性職場のイメージが強く、女性活躍は途上段階ですが、こうした若い女性社員に接すると頼もしく思います。当社の屋台骨であるモノづくりの現場に、もっともっと女性が増えていってほしいと感じます。
Q 頑張る女性や後輩に向けてのメッセージをお願いします。
「頑張りすぎずに、頑張ってほしい」と思います。
育児を始めた頃は、「母親」「妻」といった役割意識や、「こうしなければ」という思いにプレッシャーを感じていました。無我夢中で駆け抜けましたので、もう少し楽しんで育児に取り組むことができていれば、と思うことがあります。
今は、様々な支援の制度や環境が整っていますので、うまく利用しながら、育児も仕事も無理せず頑張って、幸せをつかんでほしいと願います。かつては、女性が働く上で何かを犠牲にすることが頑張ることでしたが、今は違います。特に子どもが小さい時期は、少しくらい甘えても良いのではないでしょうか。感謝の気持ちをその後の頑張りに代えて、会社に恩返しすれば良いのではと思います。