インタビュー紹介
大葉 英子さん
株式会社神鋼エンジニアリング&メンテナンス 人事労政部ダイバーシティ推進室長
ベテラン社員が辞めない会社に
会社情報
株式会社神鋼エンジニアリング&メンテナンス
【所在地】神戸市灘区岩屋北町4丁目5-22
【事業内容】建設業
【従業員数】1,232人(女性106人、男性1,126人(平成29年2月末時点))
ベテラン社員が辞めない会社に
1962年に設立、KOBELCO(神戸製鋼)のグループ企業として、製鉄所の大型機械設備の設計、製造や保全等の事業を手掛け、人材育成と技術技能の発展・継承に取り組んできた株式会社神鋼エンジニアリング&メンテナンス。
同社では、女性社員は全体の1割程度と少数ですが、だからこそ、「女性が活躍できる職場づくり」を積極的に進めています。
「組織活性化に加え、人材確保の観点からもダイバーシティの推進が重要」と語る同社ダイバーシティ推進室長の大葉英子さん。育児や介護と仕事に向き合い毎日の積み重ねを自信にかえ、働きやすく働き甲斐のある職場づくりに取り組まれた経験や、働く女性へのメッセージなどについてお話を伺いました。
育児や介護と向き合いながら働ける職場づくり
Q これまでの経歴を教えてください。
1985年大学卒業後、銀行に入行、結婚退職してしばらく仕事から離れていました。育児がひと段落したことから一念発起し、1996年に再就職しました。大学の事務職として採用されたのですが、上司の薦めがあり、学生のキャリアカウンセリングに携わることになりました。キャリアコンサルタントの勉強をして資格も取得しました。この経験により、働き方を含めた人の生き方に関わる仕事をしたいという思いが強くなり、それが今につながっていると感じています。
現在の会社には2008年に入社しました。当時、当社ではCSR活動に取り組み始めたところで、CSR推進部のスタッフとして採用されました。知識も経験もないことでしたので、私にとっては全くゼロからのスタートでした。
その後、CSR活動としてダイバーシティにも取り組むことになり、ダイバーシティ推進室が組織として発足しました。かねてから、他社の女性管理職と接するごとに、男性ばかりの自社とのギャップを痛感していましたので、この方針には大いに賛同し、意欲的に取り組みました。
現在は2代目のダイバーシティ推進室長を務めています。管理職昇進は思いもよらぬことでしたが、初代の室長であり当時の私の上司でもあった上山さん、頼れる部下の吉田さんと共に働けることは心強い限りです。この3人体制で、女性活躍やワーク・ライフ・バランスの推進に向け、全社員の意識改革に取り組んでいます。
Q いち早く介護離職を防ぐ取組みを始めたのは?
再就職時は二人の育児中でしたが、幸い、同居の父親が子どもの面倒を見てくれたこともあり、両立することができました。その父親も介護を意識させる年齢に差し掛かっていたのですが、忙しい日々の中、意識的に考えることを避けていたように思います。
2015年年初、丁度管理職になったときに父親が要介護状態になり最初は非常に混乱しました。仕事は忙しく、その上介護も分からないことばかり、回りに助けてくれる人もおらず、在宅介護の過度の負担から、今にして思えば少し鬱の状態になっていたように思います。
介護はほとんどの方にとっては、経験や心構えのない状態で直面することになります。私もそのような状況でしたので、時折得られる「介護情報」は非常に有難いものでした。経験者として男女ともに早いうちから「介護」を意識し、あらかじめ必要な知識や最新情報を得、介護に対する備えをしておくことの重要性を伝えたいと実感したことから「介護セミナー」を企画しました。
現在、「介護離職ゼロ作戦」として社員の介護への意識向上に取り組んでいます。自分の体験を元にしたものですので、公私混同かもしれませんが(笑)。介護セミナーのアンケートで「考えるきっかけになった」などの回答を目にすると、少しでも助けになったと励みになります。今後も、介護の問題が生じても、辞めずに働き続けられる環境づくりを目指していきます。
管理職として部下の支えに
Q 仕事へのモチベーションを保つために意識していることは?
育児中は、生計維持の必要性から仕事自体はしなければならないことと割り切ることができましたが、子どもが手を離れるに従い、仕事に対して色々考えるようになり、逆にモチベーションを保つことが難しくなったように感じています。私が取り組んでいる仕事は、企業利益に直結するものではないとの見方もできますので、社内で批判にさらされることもありました。そういったときは、「何のためにやっているのか」と後ろ向きに感じることもありました。
当社は、まだまだ男性中心の職場と言わざるを得ません。それでも、育休取得した女性のほぼ100%が復職するようになるなど、制度は着実に活用され社員の意識も変化してきています。これらを励みに、数少ない女性管理職の立場を意識し、使命感を持って仕事に取り組みたいと感じています。
こうした大きな目的や自分の役割を意識していると、ただ漫然と仕事するよりも、やりがいや自身の向上を実感しやすくなるのではないでしょうか。
Q 辛いときに助けになったのは?
仕事や介護が大変な時に自分をさらけ出して相談できる上司がいたことは、私にとってはたいへん幸運だったと思います。上山さんからは、仕事のことはもちろん、介護を経験された先輩として、いろいろと親身にアドバイス頂き、本当に助かりました。
この経験を踏まえ、管理職になった現在は、部下の悩みを早期に察知し、ピンチの時に支えになることが、必要な心構えと考えています。
特に介護は、育児よりも切迫感が増し、悩みも生々しいものになります。日頃から信頼関係を築いておくことにより、気兼ねなく相談できる間柄でありたいと思います。
勇気と自信を持って仕事に取り組む
Q 女性へのエールをお願いします。
まずは、目の前のことに一生懸命に取り組んでください。そして毎日の積み重ねを意識し、振り返ったときに、その成果を自分自身で認めてほしいと思います。
聞くところによると、男性は60%の自信があれば行動する一方、女性は100%の自信がなければ行動に移さない傾向が大きいそうです。女性には、勇気と自信を持ってチャレンジしてほしいとエールを送りたいです。現状、あなたの職場で女性活躍が根付いていないとしても、あなたが活躍することでその先駆けとなります。後輩のためにも、是非とも頑張ってほしいと思います。
Q 女性の活躍についてどう思われますか?
管理職については、私自身意識していませんでしたが、目指すものではなく「ついてくるもの」と感じています。大切なのは、自分が満足できる仕事ができているかということです。ただ、管理職になって、格段に仕事を進めやすくなったことは強く実感しており、一生懸命仕事をしてきてよかったと思います。
ただ、何でも吸収できる20~30代の時期に専業主婦であったことは、私にとっては少なからず後悔となっています。キャリアに空白ができたことに加え、復職への一歩を踏み出すことも一層大変なものとなってしまいましたので、今でも、辞めずに仕事と家庭を両立できていたら・・・・と思うことがあります。
だからこそ、結婚や育児、そして介護を経験しても、仕事を簡単に辞めてほしくないと思います。今はそのための制度や職場の意識も整っています。迷う気持ちがあるのなら、「もう少し頑張って」と伝えたいです。
女性活躍推進法が施行されたことを契機として、企業の本気度が変わってきたように実感しています。管理職や採用の数を単に増やすことではなく、女性が職場で新しいことにチャレンジでき、イキイキと働ける「真の女性活躍」を願いつつ、当社でも3人で力を合わせて頑張っていきます!
人事労政部ダイバーシティ推進室長の大葉英子さん(中央)、
人事労政部専任部員の上山晶子さん(右)、
ダイバーシティ推進室の吉田くに子さん(左)