インタビュー紹介
高柳 さやかさん 宇野 加恵さん
株式会社フェリシモ
高柳 さやかさん(写真右)
総務部 総務グループ 課長代理
宇野 加恵さん(写真左)
総務部 人事労務グループ 上席主任
「しあわせ社会創造」をめざす会社で、しなやかに働き続ける
会社情報
株式会社フェリシモ
【所在地】神戸市中央区浪花町59番地
【事業内容】
ダイレクトマーケティング業
【従業員数】823人
(女性670人、男性153人)
( 2018年2月末現在 )
「しあわせ社会創造」をめざす会社で、しなやかに働き続ける
1965年に設立。社名の「FELISSIMO (フェリシモ)」は、ラテン語を語源とする「FELICITY(至福)」と強調を表す接尾語「SSIMO」を融合させた新語で、「最大級で最上級のしあわせ」を意味し、顧客のしあわせな毎日をお手伝いする商品を企画しています。女性社員が全体の8割を占めることから柔軟な働き方を推進し、今では男性を含む、育休取得者年間約20名、短時間勤務選択者約100名、女性管理職比率も30%を超えました。
有能な人材活用のための「ワークスタイル改革」をさらに進める同社において、育休取得明けに初めて総務部門に配属された高柳さやかさんは、昨年、同課に配属された宇野加恵さんと共に女性活躍の輪を広げておられます。「育児を経験したことで、ひとつの仕事を完結させることの大切さを再認識できた」と語るお二人に、働き甲斐のある職場づくりや、働く女性のネットワークづくりについてお話を伺いました。
育児や介護と向き合いながら働ける職場づくり
Qこれまでの経歴を教えてください
高柳 勤続16年になります。入社後、ファッション雑貨、児童書の企画編集、調達の部署 に配属され、独身時代は納得できるまで仕事に取り組み残業もこなしていました。30代で出産した時は、先輩ママである同期の体験談を参考にしながら育休中の計画を立てました。2子を続けて出産したので、当社の2年間の育休を続けて取得して4年間休業。復職と同時に総務部に配属され、今年で5年、現在も短時間勤務をしています。
宇野 最初の配属先は、女性服の企画制作を業務とする女性が多い部署でした。チームには、子育てをしながら働くママが多く、彼女たちの姿から子育てと仕事の両立を自然と学びました。第1子出産の際に育休を約1年半取得して復帰し、生活雑貨の部署で勤務しました。第2子出産のため再び2年の育休を取得。昨年総務部に復帰して現在は短時間勤務をしています。
Q復帰後の働き方で工夫していることはありますか
高柳 5年前の総務部は、男性や独身女性が多く、残業が前提の印象がありましたので、復職に向けて十分準備しました。まずは実家近くに転居して支援を受けやすい体制を整えました。夫も私が働くことを望みましたので、家事や子育てへの協力など地盤を固めました。覚悟を決めて復職したところ、総務部が率先してワークスタイル改革を進める時期と重なり「短時間勤務者のメリハリをつけた働き方を見習おう」という流れに乗れ、本当にラッキーでした。
働き方の工夫として「情報共有」と「コンセプト作り」を心がけています。社内の部活「パパママ部(約50名のメンバー)」に所属して、家族ぐるみのバスツアーや朝ヨガを楽しむとともに、社内アンケートも依頼しています。メンバーはとても協力的でレスポンスも早く、情報共有と横のつながりができました。また、仕事は「コンセプト」を設定して取り掛かかるようにしています。企画を担当した時に培った習慣ですが、業務遂行中に迷った時も立ち戻ることができるのでブレません。
宇野 私は、既に高柳さんが「工夫しながら子育てと仕事を両立するモデル」を構築していたので、スムーズに復帰し業務を習得できました。子育てをしながらも、どうしても仕事を頑張りたい時には、家庭内の重心をずらしながら進めるように心掛けています。上司や同僚から認められる働き方を心掛けています。
高柳 宇野さんの働き方は皆から認められています。お子さんの体調不良で突然休む場合も、周囲は日々の頑張りを見ているので、どこからも文句が出ないです。急に休まなければならない時には、会社支給のスマートフォン端末が役に立ちます。外出先からメール等の確認ができますので、うまく利用しながら仕事と両立できています。
Qワークスタイル改革の取組みについて教えてください
ワークスタイル改革を進める中で総務部が率先して行ったことは、短時間勤務を利用するスタッフの声を聴くことでした。当社の短時間勤務は、前日に申請すれば開始時間を7:30~10:30の間で自由に設定できます。最も早く帰る社員は14:30に退社するので、夕方以降のミーティングに出席できないことが悩みでした。利用者の声を反映して①ミーティングは全員参加できる昼間に行う、②会議は1時間以内に内容濃く、といった社内ルールを作った結果、遠慮せずに制度を利用できるようになりました。そのほか、ノー残業デーの実施、45時間以上の残業原則禁止、ワークスタイル改革事例を朝礼で発表など様々な取り組みを実施しています。
改革が浸透したことで、限られた条件の中で最大の成果を生み出すために必要な時間・コスト意識が強くなりました。恵まれた制度に甘んじず、「自分の責任を果たす」ことをしっかり意識するスタイルが確立されつつあります。社内結婚のスタッフが互いの労働時間を調整しながら保育園へ送迎したり、約1ヶ月間の育児休業を取得する男性社員も増えてきました。
女性がさらに活躍できる仕組みづくり
Q社内の女性活躍支援について教えてください
現在の女性管理職比率30%超えは、無理にポストを作ったのではなく自然に登用した結果です。社の目標である40%の達成には、従来の「できる女性」の登用だけでは限界にきています。子育てと管理職を両立する、身近なロールモデルが限られていることが課題です。育休復帰から数年後に子どもの手が離れた時、次をどのように考えるのか。キャリアアップやダイバーシティを考える中で、どのような組織を構築するかを、総務部として考えなければならない時期にきています。
また、恵まれた制度だからこそ、育休復帰後の仕事に対するモチベーションの維持が難しいという悩みがありました。その解決のために、ひょうご女性の活躍推進事業の講師等派遣「復職後の働き方について考えるセミナー」を2年連続で開催しています。外部講師から、時短労働は成果も8割でよいわけではない、エンプロイアビリティの向上、自分に責任を持つことなどのお話を伺ったことで、生涯賃金などの長期的視点を持てたことは大きいです。
Q企業を超えた総務担当者のネットワークとはどのような活動ですか
平成29年10月に総務部で働く12社の女性スタッフの連携会議を開催しました。従来の総務部長の集まる堅い会ではなく、女性のネットワークづくりを目的とした集まりです。きっかけは、各社が持つ資源を有効活用したいと考えて、商品モニターやイベントなどの情報を共有する気軽な会から始めました。製造業、食品関係、服飾関係、大学など所属は様々ですが、20代~40代の総務担当女性中心の集まりですので話も弾みます。昨年12月の交流会でさらに機運が高まりましたので、他社の特性など情報共有できる機会を継続していきます。限定メンバーのSNSを活用して、今後も輪を広げていきたいと考えています。
Q今後のビジョンも含め、働く事の意味を後輩に伝えていただけませんか
高柳 働き続けることは、社会との繋がりを持ち続けることです。私は、育休中に社会から取り残されている感覚がありました。復職してみて、働くことで自分をアップデートし続けていると再認識しています。最近では、私の働く姿を見ている子どもが「お母さんの会社面白そう」と感じているようです。10年後も仕事という基盤を持ちながら、頑張っている後ろ姿を子どもに見せたいと考えています。
宇野 固い表現になりますが、自己実現のためには、「どうありたいか」を自分で考えて行動することが大切だと思います。2人目の育休中は「子どもを見る期間」だと考えて、上の子も保育所を退所させて自宅で2人を世話していました。ところが、子どもの欲求に応えるのに精一杯で、自分で考えて動く時間が全くと言ってよいほど取れず、何一つ自分で完結できなかったのが辛かったです。
一方、仕事では自分で考え進め、そこに創意工夫するなど、常に主体性をもって進めていくことができます。「自分がどうありたいか」を考えていくことは、自分はもちろん、子どもと向き合う上で大切なことだと感じています。働くと決めた以上は、周囲から必要とされる力をつけるため、日々積み重ねたいと考えています。高柳さんの先輩としての仕事振りは本当に尊敬しています。マネジメントだけではなく、自分で動くことについても労をいとわず、自然とチームが動きやすい道を作ってくださいます。「10年後にどういったポストに」ということは今の時点ではありませんが、それを探すために日々模索しているところです。