インタビュー紹介

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渡利 綾子さん

渡利 綾子さん

JCRファーマ株式会社
管理本部 人事総務部 人事総務グループ 課長
失敗を恐れずやってみること

会社情報

JCRファーマ株式会社
【所在地】芦屋市春日町3-19
【事業内容】医薬品の開発、製造
【従業員数】540人(女性188人、男性352人(平成30年3月末時点))

失敗を恐れずやってみること

 

 JCRファーマ株式会社は、1975年に創業、小規模ながら高度なバイオ技術に基づき、研究・開発・生産・販売まで、すべてを自社で一貫して行う製薬会社です。特に、創業当時から、希少疾病・難病の治療薬等の研究開発を進めるなど未踏分野に挑戦し続け、更に再生医療や遺伝子治療にも注力しながら、「研究開発型企業」として更なる飛躍を目指しています。
 同社の人事総務部で、社員の採用や研修等の人事業務に携わる渡利綾子さん。「職場環境をよりよくすることで、会社の成長を支えたい」と語る渡利さんですが、理系出身ながらも、かつてはバリバリ外勤の仕事をしていたこともあり、内勤は「向いていない」と感じていたとのことです。そんな渡利さんに、これまでの経歴や転機となったこと、仕事への思いや女性へのメッセージなどについて、お話を伺いました。 

外勤業務の経験を力に人事管理業務で会社の支えに

Q 現在の会社に就職した経緯についてお聞かせください。 

 昔から、人と同じことしたり、流れに身を任せたりといったことが嫌いで、常にチャレンジをしたいと思うと同時に、ずっと「働き続けたい」という気持ちを持っていました。
 進学した理工系大学では生物学を専攻、卒業後はバイオテクノロジー関連の研究職に進む同級生が多い中、「研究よりも人と接したい」と独自性を発揮し(笑)、医療機器の商社に就職、希望して営業職として働いていました。
 その後、業界のことが見えるようになると、技術進歩のめざましい医薬品開発に携わりたいと思うようになり、思い立つと居てもたってもいられず、2001年に当社に転職しました。数ある企業から当社を選択した決め手は、業務内容やアットホームな社風もさることながら、「生まれ育った地元の芦屋というなじみ深い環境なら、より力を発揮できる!」という直感です。
 当初は開発本部に所属し、開発中の医薬品の臨床データを収集する治験業務に携わりました。頻繁に出張をこなしながら、医師や看護師、薬局や厚生労働省の担当者等、様々な方と調整を重ねる中で、多くの経験やコミュニケーション力などのスキルを積みました。

Q 人事総務部に異動された経緯についてお聞かせください。 

 30代前半に結婚。地元芦屋に新居を構え2人の子どもを出産、2度育休を取得しました。
 1度目の育休後は両親の協力を得ながら外勤の多い仕事に復帰しましたが、2度目の育休復帰にあたっては、2人の育児と出張の多い仕事の両立は難しいのでは・・・・と感じていたところ、開発本部内で内勤メインの部署への異動の内示がありました。
 初めは、外回りの仕事に適性を感じていたので、正直、内勤業務が自分に務まるか、モチベーションを保てるか、自信がありませんでしたが、今後のキャリアについて考えた時、自分を成長させてくれた大好きな会社を、自分の力でよりよくしたいとのイメージが膨らみ、異動を受け入れることができました。さらに、開発本部内で人材育成(研修)の仕事に携わった経験から、次第に「より大きな視点で会社の役に立ちたい」、そのために「人事の仕事をしたい」と考えるようになりました。
 「思い立ったら即行動」で、自分の思いとキャリアプランを訴え続けた結果、希望が叶い、人事総務部に異動することができました。現在は、採用や研修の業務を担当していますが、自分が採用した社員がこの会社に入って良かったと言ってくれるとやりがいを感じますし、配属先で若手が頑張っていると耳にすると、(母ちゃん目線で)自分のことのように喜びを感じます。

仕事は時間ではない

Q 育児との両立はどのように果たされましたか。 

 育休復帰後は、時短勤務をしていました。残業できないので、段取りを意識し集中力を高めて、時間内に効率よく仕事を進めることを心がけました。また、育児と仕事を交互にこなすことが刺激をもたらし、仕事に対してより意欲的に、大胆に取り組めるようになりました。復帰前より却って成果が上がるようになりましたので、つくづく「仕事は時間ではない」と感じます。
 育休を取得することは、「キャリアの寸断」とも言われますが、私にとっては、一時的に仕事から離れることが、良い意味でのリセットの機会となり、復帰への充電期間になりました。社内では復帰後早々に昇進する方もいますし、今後、仕事と育児の両立に直面する女性へは、こうした制約下でも、本人の意識次第でパフォーマンスは落ちないことを伝えたいです。
 また、両立にあたっては、夫や両親の力が大きな支えとなりました。人間関係には恵まれてきたと思いますが、抱え込む前に潔く上司や同僚に「ヘルプ」を求めることや、それができるよう、日頃から良好な人間関係を築いておくことが大切だと思います。

Q 仕事も家庭も、まさに順風満帆のようですね。 

 そうでもなくて(笑)。20代後半は、出張も残業も多く、仕事に多くの時間を費やしていた一番の「頑張り時」であったと思います。能力以上の仕事を抱え込んでいたようで、失敗も重ねました。落ち込むことも増え、何度か「辞める」ことも考えました。
 その頃、今後のためにと「産業カウンセラー」の勉強を始めたことが、私にとって転機となりました。学びの中で、「人間、落ちるところまで落ちたら、後は上がるだけ」「あきらめることも必要」と考えられるようになり、新しい世界が開けた思いでした。「あせらず、今の自分にできることを一つずつやって行こう」という考えが、自分の中で「軸」になったと感じています。
 仕事や家庭のことがうまくいかず落ち込むときは、逃げずに思いきり悩めばよいと思います。時間をかけて考えを整理し、自分なりの答えを見つけて、次の段階に進めばよいと思います。

大好きな職場をよりよく

Q 今後はどういったことに取り組んでいきたいと思いますか。 

 就職した頃、社員は200人ぐらいでしたが、現在は500人を超える会社に成長しました。社員は皆精一杯の状況で、今後は、こうした社員へのケアやサポートとともに、更なる成長にも対応できる強い組織づくり、社員が楽しく働ける職場づくりが必要であり、私に課せられたミッションだと感じています。1人が3倍働くことは難しいですが、職場環境の向上により、生産性を3倍に上げることは可能だと思います。
 当社は、創業以来のベンチャー精神により、新しい分野に挑戦し続ける企業です。前例のないことでも失敗を気にせず、社員のチャレンジを後押ししてくれる社風があります。私も、組織や職場環境をより良くすることにより、チャレンジする社員を支え、ひいては会社を支えていきたいです。私自身もチャレンジしたいことはいくらでもあり、それを考えるとワクワクします。

Q 女性へのメッセージをお願いします。 

 やる前から無理と思わず、「まずやってみる」「飛び込んでみる」、とのチャレンジ精神を大切にしてほしいと思います。初めは不安でも、地道に成功体験を積み、自信に変えていくことで成長していくものです。辛い時は、一人で抱え込まないで、気軽に誰かの力を借りるぐらいの気構えで良いのではないでしょうか。自分の目標が周囲に理解されていれば、ありがたいことに、様々な人が、実現に向け何かと手助けしてもらえると思います。
 学生の頃から望んできた「働き続ける」ことを、こうして実現でき、本当によかったと感じています。人は、誰かの役に立ち、感謝されることが何よりも大きな喜びだと思いますが、働くということは、その最たる体験であり、生きる上での大きなモチベーションです。
 これから社会に出ようとする若い女性には、チャレンジ精神を持ち、失敗を恐れず、働くことを通じて大きな喜びを感じてほしいと思います。