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2019/08/20
「女性活躍推進と仕事の仕方~公務員として働く~」のパネルディスカッションを開催しました!
令和元年7月2日(火)、神戸学院大学にて、同大学現代社会学部清原桂子教授が担当する「男女共同参画研究」の授業の一環として、「女性活躍推進と仕事の仕方~公務員として働く~」と題するパネルディスカッションが開催されました。
兵庫県が取組む女性活躍に関する施策についての説明の後、公務員として働く女性職員4名がそれぞれの職場や家庭での様々な経験について話をされました。最後には、参加した学生達との間で、活発な質疑応答が行われました。
・コーディネーター 大久保 和代 兵庫県企画県民部女性青少年局長
・パネリスト 岩原 直子 兵庫県企画県民部県民生活局県民生活課長
木村 晶子 兵庫県産業労働部産業振興局経営商業課長
田中 純子 神戸市行財政局業務改革課担当係長
◆兵庫県が取組む女性活躍に関する施策について
(大久保局長)
兵庫県では、知事を本部長として「女性活躍推進本部」を設置しています。ちょうど昨日(7月1日)、本部会議を開き、兵庫県の現状・課題、具体的な取組等について議論しました。
兵庫県では、以前から女性の有業率の低さが課題となっており、全国都道府県の中でも最下位あたりで推移していました。ただ、平成29年の就業構造基本調査では、前回調査(平成24年)の46位から41位に上昇しました。また、「各分野における指導的地位に占める女性の割合」についても、2020年までにその割合を30%にするという目標に向け、取組を進めています。
計画としては、県全体については、「ひょうご男女いきいきプラン2020」をもとに、県庁内については、「男女共同参画兵庫県率先行動計画-ひょうごアクション8-」をもとに、それぞれで定めた目標に沿って、取組を展開しています。
本県においては、平成14年に男女共同参画社会づくり条例が施行され、企業や地域における男女共同参画に向けた取組の推進が謳われていますが、その前にまずは「県自らが男女共同参画のモデル職場にならなければならない」との考えから、先ほどの「ひょうごアクション8(以下アクション8)」を平成15年より策定しています。今では、女性活躍推進法が施行されたことで、計画策定は法律に基づいた義務となっていますが、計画を策定した当時においては、画期的な取組であったと思います。
アクション8では、「女性の能力発揮と機会拡大」「男性の家事・育児等への参画支援」「子育て・介護と仕事の両立支援」等の8つのアクションを定めています。また、アクション8を実効性のあるものにしていくために数値目標を設けています。例えば、採用者に占める女性の割合の目標値は40%ですが、昨年度実績は40.3%(H31.4新規採用者)で、すでに目標を達成しています。また、管理職(本庁課長相当職以上の職)に占める女性の割合は15%を目標値とし、昨年度実績は11.9%(H31.4.1時点)で、来年度には目標を達成する見込みです。
ただ、男性職員の育児休業の取得率はまだまだ低いのが現状で、対象職員108人の内、育児休業を取得したのは6人で、取得率は5.6%です。その一方で、兵庫県では、特別休暇として配偶者の出産補助休暇(3日間)、男性の育児参加休暇(5日間)等を設けており、それぞれの取得率は98%、72%と比較的高くなっています。
アクション8は3年ごとに改定しており、改定するごとに職員の意識調査を実施しています。昨年度(平成30年度)の計画改定に向けて、平成29年度に実施した職員意識調査では、「職場での男女共同参画や子育て支援等が進んだと思う」と回答した職員の割合は54.7%で、平成23年度調査から、22.1ポイント増えています。その理由としては、「女性の管理職が増えたから」という意見が多く、取組の進捗に呼応して、意識面でも男女共同参画が進みつつあります。
◆パネルディスカッション
Q 自己紹介をお願いします。
(木村課長)
私は兵庫県の職員になって30年程が経ちました。県職員は3年~5年で異動がありますが、私はこれまでの30年の内、8割くらいの期間、安全・安心な暮らしを推進する消費生活の仕事やボランタリー、男女共同参画等、事業系の仕事に取り組んできました。それ以外にも、農協への指導や秘書課等も経験しました。
今年の4月からは、中小企業や小規模事業所、商店街等の支援をする経営商業課という部署で働いています。
(岩原課長)
私も、木村課長と同じく兵庫県に入庁してからほぼ四半世紀が過ぎたくらいです。今まで、ほとんどの期間、事業系の仕事に取り組んできました。獣害対策に関する仕事やバスや鉄道等の公共交通に関する仕事、芸術文化、まちづくり、広報、学校法人の認可・助成に関する仕事、それに企画調整等、色々な分野における仕事に携わってきました。
(田中係長)
私は今年で入庁19年目になります。神戸市でも県と同じく3年程度のスパンで人事異動がありますので、今の部署が7つ目の部署になります。19年の内、半分くらいの期間は、産業振興に関わる仕事に携わってきました。例えば、神戸港の振興、神戸の地場産業の振興、スタートアップと呼ばれるIT系のベンチャー企業との連携等に取り組んできました。
そして昨年、係長に昇進し今の職場に配属となりました。今の仕事の最大のミッションは、庁内での働き方改革を進めることです。これから人口減少が進む中で、職員数の減少も避けられません。そんな中で、市役所がすべき業務を限られた職員でどのように行っていくのか、業務を効率化して、職員でなければできない業務に注力できる環境を作るためにどうしたらよいかを考えながら、様々な取組を進めています。
プライベートでは、夫と小学校2年生と保育園の年長の2人の娘がいる4人家族です。子どももまだまだ手がかかる年齢なので、育児と仕事を両立させながら、なんとか日々の業務に取り組んでいます。
(大久保局長)
公務員の仕事の特徴は、2・3年おきに業務が変わっていくことです。お話しいただいた3人の皆さんもそうだったように、様々な分野における仕事を経験することができます。
Q なぜ公務員になりたいと思いましたか?また、公務員になる前となった後で公務員のイメージが変わった部分はありましたか?
(木村課長)
私は女子大出身なのですが、私が就職をした時代は、クラスの半数以上が結婚を機に、仕事を辞め専業主婦になった時代でした。私は一人っ子だったので、幼い頃から両親に「自分の力で生きていけるように」とずっと言われてきました。そのため、女性が働き続けることのできる職場を就職先に選ぼうと考えていました。
また、高校生の時に神戸生活科学センター(現:兵庫県立消費生活総合センター)で開催されたセミナーに参加したことがありました。そのセミナーで、「どのようなコマーシャルをしたら人の購買意識が変わるか。」、「人が騙されないようにするためにはどうしたらいいか。」といったお話を聞いたのですが、その内容が非常におもしろく、「私もこんな仕事ができたらいいな。」と思いました。そのような経験もあり、就職活動では民間企業も受けたのですが、最終的に兵庫県を就職先に選びました。
入庁してから今まで、消費生活に関する仕事に10数年携わることができ、その他にもやりがいのある仕事にもたくさん取り組むことがきたので、県職員になって良かったと思っています。
(岩原課長)
皆さんは大学3回生とお聞きしていますが、私が大学3回生の時は、自分がどんな進路に進めばいいのか、どんな社会人になればいいのかということに漫然とした不安を感じていました。そんな時に、友達や知り合いに「人から見て私はどんな性格で、どんな仕事が向いていると思う?」と質問したところ、「1つのことに没頭して研究するようなタイプではなく、色んなことに関心があって、チャレンジするタイプだよね。」ということをよく言われました。一般的には民間企業は業種・職種が限定されることもあり、仕事で携わることができる分野もある程度定まりますが、公務員は入庁してからも色んな分野での仕事に携わることができます。また、大学時代によく遊びにきた神戸や実家のある姫路等、多様な地域性のある兵庫で、様々な分野の仕事をすることに魅力を感じましたので、友人からのアドバイスも踏まえ兵庫県職員を選びました。
冒頭の自己紹介でもお話ししましたが、入庁してから、今まで多分野の仕事に携わってくることができたので、学生時代の「色んな分野に挑戦したい。」といった夢はかなったのではないかと思っています。
(田中係長)
私も皆さんと同じ大学3回生の頃に就職活動をしていましたが、はじめは全く公務員になろうとは思っておらず、民間企業への就職を希望していました。当時は、就職氷河期と言われる時代で、なかなか内定をもらえないどころか、最終面接にすらいけないような状況でした。このまま民間企業を目指しても厳しいのではないかと思っている中、大学のゼミの先生から「公務員を目指してみてはどうか。」と言われました。当時の私には、公務員におもしろそうな仕事というイメージはありませんでした。色々と調べたり考えたりする中で、私は大学生の時に神戸に来ましたが、神戸のまちが大好きでずっと神戸に住み続けたいと思っていたこと、結婚・出産しても働き続けたいと考えていたことから、公務員を目指すことに決めました。
実際に入庁してみて、入る前が勉強不足だったこともありますが、全てが思っていたことと違いました。窓口対応以外にも、通常生活している中では分からないような仕事もたくさんあり、公務員には本当に色んな仕事があることを実感しました。異動のたびに新しいことを学べて、勉強になることばかりなので、神戸市に入庁して良かったと思っています。
(大久保局長)
仕事を選ぶ動機というのは、色々あるかと思います。木村課長や田中係長のように結婚・出産しても仕事を続けたいという思いから公務員を選んだ方もいれば、岩原課長のように友人からのアドバイスがきっかけで公務員を選んだ方もいます。公務員を目指した動機は三者三様色々とあることを、伺うことができました。
Q 仕事を続ける上でのモチベーションは何ですか?また、公務員の魅力は何ですか?
(木村課長)
自分が始めた事業が、何年か経って、多くの人を巻き込んだ大きな事業となっていることがあります。例えば、大学生に消費生活のリーダーとして活躍してもらおうという趣旨で平成22年に開始した「くらしのヤングクリエーター」という事業がありますが、10年ほどたった今では、大学生が自ら企画して事業者団体や消費者団体と協力してフォーラム等を実施する大きな事業になりました。自分が担当した事業が大きく広がっているのは嬉しいことです。
公務員は究極のサービス業だと思います。人と人や団体、事業者の方等、いろいろな糸をつないでいくことが私達の役目です。糸が繋がって、最初にまいた種が大きく育っていくのが見えた時に、仕事のやりがいを感じることができます。そういった経験ができることが、公務員の仕事の魅力だと思います。
(岩原課長)
視点を変えて、プライベート面からお話しします。大きなものとしては、夏休みや冬休みのプチ旅行が私の仕事のモチベーションになっています。また、小さなものでいうと、毎日のスタートをいかに気持ちよくきれるかといったことも重要だと思っています。以前は夜型の人間でしたが、今は朝早くに起きて、時間を見つけては朝活をやっています。朝活では、体をほぐすラジオ体操と頭を起動させる英語の勉強をしています。朝活をすることで、1日のスタートを気持ちよくきることができるようになりました。
また、仕事面でのモチベーションとしては、2~3年ごとに異動できること。フレッシュな気持ちで取り組めることもモチベーション維持につながっていると思います。先ほど木村課長のお話しの中にもでてきた消費生活総合センターや私が携わってきた分野では森林動物研究センターや、人と自然の博物館等、公務員には多岐にわたる業務内容があるだけ、専門機関や専門知識を有する人材もそろっています。様々な分野で色んな人と関わりながら働けることも、公務員の魅力だと思います。
(田中係長)
モチベーションを保つ上で、仕事に対するやりがいを持つことも大事ですが、プライベートを充実させることも大事だと思っています。子どもが生まれるまでは、毎年1、2回長期で休みをとって海外旅行に行っていました。仕事が辛い時にも、「辞めたら旅行に行けなくなるよ。」と自分に言い聞かせながら頑張っていました。また、週末には自分の好きな習い事に打ち込んだりもして、そのような楽しみがリフレッシュになって良かったと思います。子どもが生まれてからは、頑張って働いている姿を子どもに見せなければという思いから仕事をしているので、子どもたちが仕事のモチベーションになっています。
公務員の魅力は、他のお二人の方々もお話しされましたが、色んな仕事を経験する中で、異動するごとに新しい知識を得ながら成長できることだと思います。また、仕事をしている中で、自分に向いていない仕事や辛いこともありますし、職場に合わない人がいることもありますが、2~3年すれば異動があることから、その期間我慢すれば、また全く違う環境で仕事ができるチャンスがくるので、それも公務員の魅力だと思っています。
(大久保局長)
公務員の魅力としては、「2~3年おきに異動があることで、色んな仕事を経験できること」と皆さんお話しされました。異動の度、新しい仕事の勉強をすることの繰り返しになりますが、その度に自分の成長を実感できると思います。また、プライベートでも色々と楽しみを作ることで、気持ちを切り替えて取り組んでおられるようです。
Q 仕事をしていく上で、嬉しいことだけでなく、大変なこともあるかと思いますが、それをどのようにして今まで乗り越えてきましたか?
(木村課長)
仕事をしていると、理不尽なことを言われることもあります。クレーマーの方から何度も電話で厳しいことを言われた辛い経験もありました。そんな時も相談に乗ってくれる同僚や上司がいてくれたことで、仕事を続けることができたと思います。
私も子育てをしながら仕事をしてきました。私が入庁した時は、女性職員は2割もいなかったと思います。そんな中で、私はラッキーなことに、女性の先輩職員がいる職場に配属されることが多く、周りに子育てをしながら働いてこられた先輩女性職員がたくさんいらっしゃいました。困った時にはいつでも相談できる人がいる環境に恵まれたのが良かったと思っています。
(岩原課長)
辛い経験は今までたくさんありましたが、時間が経つと意外といい経験になっていることが多いように感じます。辛い経験と嬉しい経験というのは表裏一体だと思っています。
私が係長になったくらいの頃、団体との交渉に伺った時に、「係長ではなく、もっと上の者を出せ。」と言われたことがありました。今になって振り返ると、そもそも知識が不足していた、説明がよくなかった等、色々と改善点はあったかと思いますが、その当時の私になかなか理解できないことでした。当時の上司に相談すると、「仕事は自分1人でするのではなく、チーム全体でするものだよ。係長でだめと言われたなら、副課長・課長に頼んだらいい。そのために上のポストがあるのだから。」と言っていただきました。組織として、チームの一員として仕事をする大切さを学びました。
実際、今まで携わってきた事業は、色んな人の力があってこそ達成できたものばかりでした。自分の係だけでなく、市町や団体等様々な関係者を巻き込んだ大きな事業であればあるほど達成感は大きくなります。
特に心に残っている事業は、5・6年ほど前に、兵庫県と淡路島の3市とで実施した淡路島行きバスでのICカード導入に向けたプロジェクトです。淡路島直通のバスを運行しているバス会社は6社ありますが、以前はどこの会社のバスもICカードの使用ができませんでした。6年前に事業に着手し、ようやく今年度になって全ての会社の合意を得ることができ、ICカードの使用の目処が立ったということを当時一緒に調整で汗を流したバス会社の仲間等から話を聞きました。
もちろん、私1人でできた事業ではありません。多くの人や団体と調整をし、それぞれの役割分担のもと事業に取り組んできた結果だと思います。交渉が難航し頭を抱えたことも多々ありました。ただ、このような大きな事業に携わり、やろうとしていたこと、苦労したことが形になると、やはり嬉しく感じます。
(田中係長)
様々な仕事をしてきて、それぞれの職場で辛かった経験・嬉しかった経験が色々とあります。最近では、1つ前の職場で携わった「ITを活用した成長型起業家(スタートアップ)支援」の事業が心に残っています。当時、この事業は市としての新規事業で似たような事例も他に無かったことから、何をするにも手探りで、どう進めていけばいいのか調べるところから始めました。市として力を入れている事業ということもあり、上から指示されることも多く、日々の業務をこなすだけで精一杯でした。
そんな時に、「庁内の各部署が抱えている課題について、スタートアップと連携して、解決策を考えていこう。」というプロジェクトの立ち上げに携わりました。まずは、庁内で課題を見つけることから始まり、課題が見つかった後は、その課題を解決してくれるスタートアップ探しをしました。なんとかスタートアップとのマッチングができ、課題解決に向けて動き出したものの、初めての経験で職員もスタートアップもどう進めたらいいのかが分からず、半年間かけたものの結局良い解決策は見つからず、プロジェクトは失敗に終わってしまいました。その後すぐに私は異動になりましたが、このプロジェクトは今後どうなるのだろう…という心配がありました。
しかし、その後、庁内でのプロジェクトの認知度も高まり、「こんな課題を解決して欲しい。」との声もたくさんあがるようになりました。また、メディアに取り上げられたり、参加してくれるスタートアップも増えたりして、今では成功事例もたくさん出てきています。自分は成功できなかったものの、その失敗が今の成功に繋がっているのではないかと思うので、良いプロジェクトに成長している様子を見て、自分のことのように嬉しく思います。
ただ、その事業に携わっていた当時は仕事と家事・育児の両立が本当に大変でした。周りからフォローを得ながらなんとか仕事をしており、周りの人に対しては申し訳ないという気持ちが大きかったです。そんな時に、当時の上司が、限られた時間の中で優先順位をつけて仕事に取り組んでいる点で私を褒めてくれているという話を聞きました。そのように上司から評価してもらえていることを知ったことで、自分の働き方に自信を持つことができました。
(大久保局長)
3名のお話しにもあったように、大きなプロジェクトに携わると、やはり辛い経験をすることもありますが、それを成し遂げたときには大きな達成感・やりがいを感じることができます。まさに岩原課長がおっしゃったように「辛い経験と嬉しい経験は表裏一体」だと思います。
また、神戸市では、民間の知恵を借りながら、庁内での課題解決を目指すという新しい試みをされているとのことですが、田中係長からはその取組に携わっておられた時の貴重なお話しも聞くことができました。
Q 仕事と家庭をどのようにして両立してきましたか?
(木村課長)
私は今芦屋に住んでいて、夫は仕事で滋賀まで通っています。結婚してすぐは2人の職場の中間にある高槻に住んでいましたが、子どもが生まれる時に、保育園のお迎えを考えて芦屋に引っ越しました。
子どもが生まれた後すぐに阪神・淡路大震災が起こり、芦屋の自宅は全壊してしまいました。育休の時期だったので、しばらくの間夫の職場に近い大津で生活することになりました。その時、仕事を続けるかどうか非常に悩み、夫の両親からもこのまま滋賀にいたらどうかと言われました。それでも今の仕事をもう少し頑張りたいという気持ちがあったので、夫とも相談した上、芦屋に戻ることに決めました。地震の影響で住める状態の家が限られており、引っ越しを繰り返しながらも、娘を保育園に預け、仕事に復帰しました。その5年後、2人目の子どもが生まれました。ただ、子どもたちが2人とも病気がちで、何度も入院しました。そんな時も、仕事に行く間は両親に来てもらったり、病院の方の助けを得たり、職場の理解もあったので、仕事を続けることができました。
私が子どもを産んだ時は、育休は最大1年間でしたが、今では最大3年間取得することができます。私の今の職場では、子育てのために時短勤務をしている職員が女性も男性もいます。公務員はそういった制度が充実していますので、非常に仕事と家庭の両立がしやすい環境にあると思います。
子育てをしながら仕事をするのは大変なこともありますが、仕事で嫌なことがあっても、子どもと接したり家事をする中で忘れることができることもあります。子どもの心配事がある時や、子どもを怒ってしまった時も、職場に来ると仕事に集中しないといけない。そのように、職場と家庭とで気持ちの切り替えができたので、私は子育てをしながら仕事ができて良かったと思っています。
(岩原課長)
私は介護と仕事の両立についてお話ししたいと思います。まだ皆さんにとっては、介護は直近の課題にはなっていないかと思いますが、私自身も自分にとって介護はまだまだ先のことだと思っていました。しかし、3年前に義理の母が自宅の階段から転げ落ちて骨折をし、入院をしたのをきっかけに、義母は認知症を発症し、今では要介護度が4で、人の介助が無ければ日常生活がままならない状態となっています。義母と義父は2人暮らしで、義父については特に問題なく自分1人で日常生活を送ることができますが、80歳を超える高齢ということもあり自分で家事をすることができません。そのため、今は私と夫と、義理の兄の家族とで協力しながら介護を行っています。
仕事がある平日の日中の介護については、デイサービスとホームヘルパー制度を活用し、平日の朝晩や休日については、2家族でローテーションを組んで介護を行っています。2家族の間でスマホのアプリEvernoteを利用してお互いのスケジュール管理を行い、誰がどのタイミングで行くことができるのかを共有しています。誰かがどうしても忙しい時期には、他の誰かに負担が多くかかることもあります。そんな時には、3カ月ごとに開催する家族会議という名の飲み会の場で、負担が大きかった人の慰労を兼ね食事代を無料にするなどして、うまく調整するようにしています。
公務員には、介護休暇という制度があり、私自身介護休暇をとろうと考えた時期もあります。また、本来、公務員は公共交通機関を使用して通勤するのが原則ですが、通勤手段の配慮により、最寄り駅まで自家用車で通勤することを認めてもらっています。このおかげで、仕事終わりにすぐに義母の家に駆け付けたり、会社に行く前のちょっとした時間に義母の様子を見に行くことができます。このような配慮があったおかげで、私は今介護と仕事との両立ができていると思います。
(田中係長)
先ほども話しましたが、私は子どもがまだ小さいため、両立が大変だと感じることも多い時期です。自分1人ではできないことも多いので、「頼れる人は頼る。使える制度は使う。」というスタンスでやっています。
私の夫は、自営業をしていることもあり、土日も仕事で、平日は仕事が終わる時間も遅いことから、主に朝保育園に連れていくことをお願いしています。ただ、その他のことを全部私1人だけですることは難しいので、夫の親や自分の親にお願いして、週に2回程度、保育園に子どもをお迎えに行ってもらうなどして助けてもらっています。
また、神戸市にも、職員の仕事と子育ての両立支援に関する色んな制度があります。例えば、4年ほど前に在宅勤務制度が導入されました。私はとりあえず利用してみることにしましたが、使い勝手が悪かったこともあり、当時実際に制度を使っていたのは私1人でした。利用者が増えない原因を探るために、制度を使っているたった1人の私に「どうしたらもっと制度を使いやすくなるのか。」を聞いていただいたことがありました。当時はタブレットパソコンが配布されましたが、庁内のシステムにはログインできないので、できる仕事が限られており、自宅ではメールと簡単な資料作りくらいしかできませんでした。また、在宅勤務をする度にパソコンを持って帰る必要があり、保育園の送り迎えでまだ小さかった子どもを抱えながら重いパソコンを持って帰るのは大変でした。そういったことを話すと、私の意見もいくらか聞き入れてくださり、制度が随分利用しやすくなりました。今では制度の利用者が増えて、パソコンが足りないことから利用制限がかかるくらいになっているようです。
また、神戸市では、フレックスタイム制度も2年ほど前から導入され、導入当初から利用していますが、在宅勤務とフレックスタイム制度を併用した働き方も可能になりました。通常8時45分が始業時間ですが、在宅勤務の日は子どもたちを送り出した後8時くらいから仕事を始め、その分仕事を早く終わらせて、保育園に迎えに行っています。また、通勤時間がかからない分、昼休みは家事をする時間にあてられますので、時間を有効に活用することができています。また、職員全体としてはまだ男性の育児休業利用者は少ないですが、私の周りでは男性職員で育児休業を取得している人もいます。また、子どもの送り迎えを夫婦で分担している人も多くいます。そのように、男性も女性も子育てしながら働きやすい環境が整っていると思います。
(大久保局長)
それぞれ、子育てや介護と仕事の両立について話していただきました。民間企業では、今でも第1子出産後に5割の女性が仕事を辞めていると言われる中で、兵庫県の場合はほぼ100%の女性職員が出産後も仕事を続けています。そういった点からみても、公務員は仕事や家庭との両立がしやすい環境にあるのではないかと思います。
Q 最後に一言ずつ、学生の皆さんに向けてメッセージをお願いします。
(木村課長)
皆さんの中で、兵庫県出身の方はどれくらいおられますか。出身ではない方も、縁あって神戸学院大学に入学され、兵庫県にきてくださいました。私が今所属している産業労働部では、「ひょうごで働こう!プロジェクト」を実施しています。本日は「ひょうご・しごと情報広場」のパンフレットを配布していますが、広場ではきめ細かい就職支援や総合的な職業相談を実施しています。神戸駅近くのクリスタルタワーの12階ですので、皆さん、ぜひご活用ください。
私達と一緒に公務員として働いていただくことも1つの選択肢ですし、県内の魅力ある企業で働いていただくという選択肢もあります。どんな形であれ、ぜひ皆さんに兵庫で働いていただきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
(岩原課長)
兵庫県では、ワーク・ライフ・バランスの推進、働き方改革等に率先して取り組んでいます。女性・男性共に働きやすい環境にあると思いますし、男女関わらず私のように介護中の方、子育て中の方も生活と仕事を両立しながらいきいきと働くことができる職場だと思います。
また、昨年「兵庫2030年の展望」を策定し、「2030年には、県民の皆さんがもっといきいきと楽しく暮らせる兵庫県にしていこう。」という思いを込めて、様々な事業に取り組んでいます。県庁は神戸の元町にありますが、再整備事業が動き出しており、県庁も大きく変わろうとしています。ぜひ、皆さんと一緒によりよい兵庫県にしていくための仕事ができればと思いますので、また2年後お会いできることを楽しみにしています。
(田中係長)
神戸市でも庁舎の建て替え・移転や、三宮駅前の再開発事業に取り組んでいるところです。福岡市や川崎市に人口を抜かされるなど暗いニュースもありますが、そんな中でも、「神戸市の魅力は何なのか。どうしたら若者が集まるのか。」といったことについて知恵を絞りながら、様々な取組を行っています。私が携わっていたスタートアップ支援事業もその1つです。
ぜひ、皆さんと一緒に神戸市の活性化に向けて取り組んでいければと思います。今日はありがとうございました。
◆質疑応答
Q 女性活躍や男女共同参画については最近になって積極的に取り組まれるようになったと勉強しましたが、実際に働いてきた中でどのように職場環境が変わってきたと感じていますか?また、それを男性職員はどのように感じていると思いますか?
(大久保局長)
私自身は、県庁に入ったのは33年前ですが、入庁当時は男女の格差がありました。県庁に入って最初にした仕事はお茶くみで、それぞれの職員の飲み物の好みを覚え、朝昼晩に飲み物を用意し、それだけで1日が終わることもありました。
平成15年に県庁でアクション8が策定されてから、女性職員がお茶くみをするといった慣習の廃止をはじめとして、職場での男女の格差をなくしていくために、色々な取組が始まりました。例えば、それまでは、男性職員ばかりで構成されていた財政・人事・総務といった主要な管理部門の部署にも女性職員が配属されるようになりました。今では男性だから女性だからといった理由で配属が決まることはないので、性別に関わらず自分のやりたいことができる、働きやすい環境になったと思います。
また、最近女性の管理職が増えてきた中で、男性職員からも、「女性の上司の下で働くのは、非常に働きやすい。」という意見も聞きます。女性が働きやすい職場は男性にとっても働きやすい職場だと思います。
Q 先ほどの木村課長のお話しの中で、クレーマー対応に関して、上司や同僚の支えがあったとお聞きしましたが、職場で職員のメンタル面でのケアに関する取組はありますか?
(木村課長)
県では、メンタル研修やクレーマー対応について学ぶ研修もありますし、仕事での悩みを相談できる場所もあります。また、多くの職場が、自分1人で抱え込まずに上司に相談できる環境にあると思います。
Q 最近民間企業では、社内に子どもを預かる場所が設置されているところがあると聞いたことがありますが、皆さんの職場にはそのような場所が設置されていますか?
(大久保局長)
確かに民間企業ではそれぞれの企業の都合で自主的に企業内保育所を設置されているところもあります。以前県庁でも庁内保育所を作ろうという構想がありましたが、職員向けのアンケートで「庁内に保育所が必要だと思いますか。」と質問してみたところ、「満員電車に乗って子どもを県庁に連れてくるのが大変なので、子どもを預けるのは家に近い保育所がいい。」といった意見が多かったこともあり、県では庁内保育所の導入は見送ることになりました。
Q 民間企業と比べて公務員は福利厚生が充実しているように感じました。民間企業は(企業にもよるとは思いますが)女性の働きやすさの面で公務員と比べて遅れているように思いますが、その理由は何だと思いますか?
(木村課長)
特に規模の小さな企業では、人手不足等の色々な問題があって、社員の福利厚生に関する制度の導入が難しい状況にある企業もあると思います。そんな中で、行政は女性の活躍推進や働き方改革等に関して、民間企業に率先して取り組むべき立場にあります。また、県内企業が取組を進めるにあたって、支援していくことが私達行政の仕事だと思っています。
(清原教授)
民間企業での取組は、差が大きいと思います。役所以上に先進的な取組をしている企業もあれば、制度はあるけれども、まだまだ利用がしづらいといった状況の企業もあります。そういった企業が改革に取り組んでいけるよう支援をするのが行政の役割でもあります。
Q 男性の育児休業(以下育休)について、私もゼミで調べていますが、会社の雰囲気や「育児をするのは女性」といったイメージが根付いていること等によって、まだまだ男性が育休を取りづらい環境にあると思います。男性が育休を取りやすくするためにはどのような取組が必要だと思いますか?
(大久保局長)
男性の育休取得については、大きな課題になっています。今の若い人の多くは、男性もどんどん育休を取っていきたいと思っているのではないでしょうか。しかし、職場の上司が男性の育休取得への理解が足りていないことも多く、「育休は女性がとるもの」といった意識が根強く残っていると思います。兵庫県でも女性職員は対象者の100%が育休を取得している一方で、男性職員は対象者の5%しか取得していません。職員へのアンケート調査でも、「育休を取りたいとは思っているけど、職場の雰囲気や自分の抱えている仕事もあって、取ることができない。」という男性職員の回答がありました。
やはり、意識を変えていくことは大切だと思いますが、意識の変化には時間がかかります。今自民党の議員団の中では男性の育休取得の義務化をしてはどうかという動きがでてきています。もし義務化がされると否応なく男性も育休を取得することになりますし、そのように制度が整うとそれに伴って意識も変わると思います。
Q 兵庫県での女性活躍に向けた取組については講義の中でも勉強しましたが、今回「兵庫県の女性の有業率が低い」ということを聞いて驚きました。なぜ兵庫県の女性の有業率が低いのかについて教えていただきたいです。
(大久保局長)
以前から兵庫県の女性の有業率が低いのは課題でしたが、その一番の要因として「男性は外で働いて、女性は家で家事・育児をする」といった性別役割分担意識が根強く残っていることが挙げられます。性別役割分担意識に賛成する人の割合が全国平均よりも高かったという調査結果があり、特に若い層で賛成と答えた割合が高いという結果も出ています。
その他にも、女性の正規雇用率や保育サービスの供給量、男性の長時間労働比率等が女性の有業率に影響を与えているといった考察も得られています。そのような結果を踏まえて、県では施策に取り組んでいるところです。
(清原教授)
兵庫県の女性の有業率の低さは長年課題になっています。他の都道府県と比べても、女性の有業率は下から2番目あたりで推移してします。ただ、M字カーブの底の部分である、子育て中の女性の有業率については、全国平均でも兵庫県でも上昇してきており、M字カーブはどんどん浅くなってきています。働きたい人が働けるような環境づくりに向けての支援をしていくことが行政には求められています。また、大久保局長もおっしゃったように、1人1人の意識を変えていくことも大切です。
Q 介護と仕事を両立していく上で、便利になったと感じる制度と、もっとこうなったらいいなと感じる部分について教えてください。
(岩原課長)
兵庫県の場合、短期での介護休暇を最大5日間取得することができます。また、先ほど私が通勤方法について配慮をしてもらっているとお話ししましたが、これは介護のためというよりは、働き方改革の一環としてだと思っています。今県庁では通勤には公共交通機関の利用が基本とされていますが、子育て中の職員等にとっても、パークアンドライドで通勤することができれば、行動範囲が広がり生活が便利になる人も多いかと思いますので、そういった配慮がより多くの人に向けられればいいなと考えています。
Q 田中係長は、在宅勤務制度利用者のモデルケースになられたかと思いますが、当時はどんな気持ちで制度を利用していましたか?
(田中係長)
制度導入当時は職員全体に「在宅勤務制度が導入されましたので、ぜひ利用してください。」と広く募集がかけられていました。私自身は、通勤時間がかからないことに非常にメリットを感じましたし、当時の担当していた業務は家でもできるようなことが多かったので、ぜひ在宅勤務制度を利用したいと思いました。結果として私以外には希望者がいなかったことで、モデルケースになりました。自分が制度を利用して感じたことを所管課に伝え、制度がより良くなって、今では多くの人が利用しているのを見ると、あの時手をあげて制度を使ってみて良かったなと感じます。
Q パネルディスカッション・質疑応答を終えて、最後に一言ずつお願いします。
(田中係長)
今日はこんな機会をいただきまして、ありがとうございました。皆さんのような若い方々が性別に関係なく自分が何をしたいかということを考え、目標に向かって努力していっていただくことで、これからの日本はもっと元気になっていくのではないかと思います。
(岩原課長)
私が大学に入学した時が、男女雇用機会均等法ができた年でした。その当時の私と比べ、今の皆さんは男女共同参画について真剣に学んでおられ知識が深いことを知り、とても心強く感じました。本日はどうもありがとうございました。
(木村課長)
皆さんがこれから就職活動をするなかで、面接では色々と深堀して質問されると思います。今一度自分が何をしたいのか、自分の強みは何なのかを考えてみてください。ぜひ兵庫県の試験も受けていただきたいと思います。また皆さんにお会いできることを楽しみにしています。今日はありがとうございました。
(大久保局長)
私は10年程前に係長として男女共同参画の仕事に携わっていましたが、今再び局長としてこの仕事に関わり、「性別に関わらず自らの意志で個性・能力を発揮することができる社会」といった男女共同参画社会の理念の素晴らしさを改めて実感しています。
皆さんも就職活動をしていく上で、そういった男女共同参画社会の理念を念頭に置きながら、頑張っていただければと思います。