事例紹介
~属性を問わない採用でクリエイティブな発想を引き出す~
ロボット製造の髙丸工業株式会社
会社情報
髙丸工業株式会社
〒662-0925 西宮市朝凪町1-50 JFE西宮工場内
創 立 年:1967年
業 種:製造業(ロボット製造業)
従業員数:男性22名/女性4名(2020年3月現在)
事業内容:ロボット及び同周辺機器製造等
~属性を問わない採用でクリエイティブな発想を引き出す~
■「SIerロボット導入実証事業採択実績ランキング1位」を3年連続で獲得
同社は1967年に自動機械製造工場として事業基盤を築き、1985年に現在の2代目社長である髙丸正氏が就任し、ロボット関連事業に本格参入することとなりました。以後、SIer(ロボットシステムインテグレータ)として、ロボットの技術革新、顧客の要望に合わせたロボット提案、さらにはロボットオペレーターの育成に力を注いでいます。1995年に兵庫県新産業創造プログラム認定、2007年に経済産業省の異分野開拓計画(新連携)の認定を受けるなど、ロボット業界を牽引する企業として注目されており、2015~2017年度の「ロボット導入実証事業」においては、SIerとして採択数全国1位の実績があります。
■日本の製造業にとって不可欠である「ロボット産業」の未来を担う
ロボット産業の世界的動向に目を向けると、ロボット稼働率が1985年に日本で約68%、アメリカで約15%だった割合が、2015年に日本で約23%、中国で約15%、アメリカにはロボットメーカーはなくなりました。すなわち、ロボット業界においてアジア勢が台頭し、現在でも日本が牽引している産業であることが分かると思います。髙丸社長によれば、テレビ・アニメなどでも日本人にはロボットは正義の味方であり共存しているが、欧米人にとってロボットは戦う相手であり、敵対するようなイメージであることからも、ロボットに好意的な日本の製造業にとってロボット産業への着手は有利に働くということがあるそうです。したがって、日本経済の課題である労働力不足の解消や生産性向上に向けて、ロボットの技術を高めること、ロボットの導入を促進すること、ロボットを使いこなすことで、日本の製造業の競争力は高まるのではないでしょうか。
■女性(文系)社員が活躍する場を広げる
現在、同社では産業用ロボット特別教育講習を積極的に開催し、ロボットオペレーターの育成に励んでいます。この特別教育講習をおこなうロボットインストラクターとして活躍しているのが同社の文系出身者及び女性社員です。ロボット業界で活躍する女性の割合はまだまだ低く、今後、女性の割合を増やしていくことは、企業の競争力強化につながると髙丸社長は考えています。一般的に、ものづくり現場やロボット業界といえば理系出身者・男性の職場と考えられがちですが、社員の属性が偏ると社内でクリエイティブな発想が生まれにくくなります。とりわけ同社ではスポーツや音楽、芸術に携わってきた社員が多く活躍しており、既存の概念に縛られない豊かな感性が同社の成長を支えています。特に女性のロボットインストラクターによる講習は、丁寧でわかりやすいと受講者からの評判が高くなっております。もちろん同社では文系・理系、性別、未経験を問わない採用をおこなっており、社員には最初にインストラクターの業務を指導しています。今後、社内でインストラクター以外にも、ロボット導入前テストなどの分野においても文系出身者・女性の活躍の場を広げていく構想です。
■「業務仕分け」による女性就業促進の取組
非製造業の男女比率が概ね同数であるのに対し、製造業は男性7:女性3、製造業における最重要課題である人手不足解消、ダイバーシティ経営による競争力強化に向けて、女性の力は最大の潜在力です。
その潜在力を最大限に活かすため、製造業の一連の業務において、女性(文系)人材でも担当可能な業務を切り出し、人材活用の促進を目指すことを目的として、兵庫県では「ものづくり分野における女性就業促進事業」を実施しています。本事業では、女性(文系)人材に対するものづくり分野への研修の実施などにより、製造業の分野におけるさらなる女性就業の促進を図り、モデルケースを創っていきます。
■担当部署による業務仕分けの手法
「ものづくり分野における女性就業促進事業」において、企業全体の業務を把握している担当部署が業務仕分けを実施しました。髙丸工業におけるロボットインストラクター業務は、女性(文系)社員が担える体制が整っており、スキルとして身につけることで職場で長く働くことができるメリットとなります。
すでに女性(文系)社員が従事しているロボットインストラクター業務に加え、今後ロボットオペレーター業務のすべての業務において、女性(文系)社員が従事することを目指し、さらには将来的に今回の仕分け結果を踏まえ、その他の業務にも拡充していきます。
■女性(文系)社員の活躍と定着に向けて
Q.女性(文系)社員が働くにあたっての課題はありますか。
ロボットインストラクター、ロボットオペレーター業務は、非常に長い研修期間が必要となります。また、専門用語が非常に多いため、初めて耳にする言葉が多くあります。そのことから、理解した上で相手に伝えるという難しさがあります。
Q.先ほどの課題に対する解決策はありますか。
上記業務を楽しんでやることです。分からないことは周りの先輩方に聞きながら、意欲をもって継続していくことが大事です。
Q.就職活動中の女性(文系)学生の方へ一言。
困った時は、先輩方が優しく教えてくれるなど、非常に風通しのよい職場です。
何でも楽しみながら、是非一緒にがんばりましょう!
髙丸工業との意見交換について
■ 女性(文系)社員でも可能! 「ロボットインストラクター業務」「ロボットオペレーター業務」
ロボットインストラクター業務については、業務工程のすべてを女性(文系)社員が担える体制が整っています。ロボットオペレーター業務については、展示会において女性(文系)社員が1人でアテンドを担える体制まで整っています。その他、導入前テストや受注システムにおけるロボットオペレーター業務は高い専門知識や経験が必要とされ、現在はこの段階までは女性(文系)社員は携わっていませんが、インストラクター業務を経て専門知識を身に付けることで、ロボットオペレーター業務へのステップアップが可能となります。規模の小さいデモンストレーション、プログラムの作成などへ段階的に進み、その後、現場に出られるように意図的に人材教育をおこなうことを目指しています。
■ 女性(文系)社員の「定着」に向けた課題
女性(文系)に門戸を開いている同社ですが、今後は女性(文系)社員の「定着」に対する解決策を模索しています。これまで多くの女性社員を雇用し、インストラクターやオペレーターとして一から教育してきましたが、専門用語も多く敬遠されてきました。
同社で「インストラクター」や「オペレーター」業務を女性の活躍の場と捉えているのは、いわゆるワークライフバランスの実現のためです。特に、インストラクター業務は産休や育休などを経ても十分に仕事復帰しやすい業務であり、産休や育休の制度は同社の規定にも定められており、働きやすい職場の提供は重視されています。しかしながら、ロボットに関わるうえで必要とされる知識やスキルは簡単なものではありません。一人前のインストラクター・オペレーターになるにはそれなりのトレーニングが必要とされるため、意欲を持ち、継続することが大事となります。
■ 女性(文系)社員の定着に向けた考え方
こうしたギャップを埋め「定着」する人材育成に取組むうえで、目を付けているのが体育会系の人材です。学生時代からスポーツや部活動などに熱心になった経験のある人は、専門知識や経験を積むために時間をかけ、スキルを習得することに努力を重ねる傾向にあります。また、インストラクターの業務で人に指導をする講師としての能力も活かされています。
一方で、学生時代にスポーツなどの部活動に熱心に取組む学生ほど、試合などにより就職活動に出遅れることも多いそうです。したがって、安心してスポーツをやり遂げ、その後の社会人としての生活でも、個人の得意なことが活かされるように、人材のマッチングを図っていこうとしています。