インタビュー紹介

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野村 めぐみさん

野村 めぐみさん

金田運輸株式会社
代表取締役
「社員は家族」

会社情報

金田運輸株式会社
【所在地】兵庫県西宮市前浜町3番36号
【事業内容】学校給食を主軸とした運送業
【社員数】66名(男性52名:78.8%、女性14名:21.2%)※令和6年3月時点

「社員は家族」

 金田運輸(株)は昭和28(1953年)年に西宮で創業し、令和5年(2023年)に70年の節目を迎えました。創業以来、堅実経営をモットーに、他社に先駆けて環境に優しい天然ガストラックを導入し、「兵庫県あおぞら大賞」を受賞するなど、SDGs推進に取り組んでいます。また、中学生の職業体験「トライやる・ウィーク」の受け入れなど、地域に密着した様々な活動も行なっています。
 今回は代表取締役として活躍する野村めぐみさんにお話を伺いました。

Q入社された経緯について教えてください。

 私の父は金田運輸の創業時から運転手として働いていました。当時は社員も10人ほどで、お正月には金田社長(当時)の家に集まるなど、家族ぐるみのお付き合いをしていました。
 大学生になったとき、金田社長に「バイトをするなら、会社の事務を手伝ってほしい」と声をかけられたのがきっかけです。父は娘と一緒に働く気恥ずかしさからか、反対していましたけど(笑)
 大学1年生のときから、家でお習字教室とピアノ教室を開いていたため、最初の頃は授業と教室の空き時間に荷物の送り状を書く仕事などをしていました。当時は「大学生」「お習字教室」「ピアノ教室」「金田運輸」の4つの仕事を掛け持ちしていました。
 その後、阪神・淡路大震災で、お習字教室とピアノ教室が廃業となり、逆に金田運輸は救援物資の輸送等で忙しくなったため、その際に正社員として採用されました。

Q社長に就任されるまでの道のりを教えてください。

 金田社長が高齢で引退され、私の父が社長を引き継ぎ、私は専務になりました。父が約20年間社長を務め、その後、平成22年に私が引き継ぎました。
 学生アルバイト時代から色々なお手伝いをしていたため、誰よりも職歴が長く、社内のすべての業務を把握していたことや、社外の人脈も培っていたことなどを理由に、みんなに推される形で社長になりました。学生時代に簿記の資格を取得し、社会保険の手続きは実務をしていたことも大きかったですね。
 今でも運送業は女性社長が少ない業界ですが、就任当初は社長だと思ってもらえず、委任状を求められたり、男性担当者の対応を求められたりするなどの苦労もありました。

西宮の子どもたちのために

Q学校給食事業で天然ガストラックやハイブリット車を導入

 きっかけは阪神・淡路大震災でした。地震直後にダンプが排出する黒煙や、ほこりだらけになった西宮をみて、当社のトラックだけでもクリーンな排ガスにしようと思い、たどり着いたのが天然ガストラックでした。通常のトラックと比べると車両価格は1.5倍しますが、クリーンな排気で子どもたちのいる学校に給食を届けられるよう、他社に先駆けて平成11年から導入を決断しました。

Qトライやる・ウィーク、ハローワークの職業訓練の受け入れについて

 西宮市の子どもたちを応援したい、市民のためにと思い仕事をしていますので、トライやる・ウィークは第1回から受け入れしています。給食の配達は実践的で、子どもたちに一番密着している職業と思っており、毎年受け入れを行なっています。学校では話せなかった子どもたちも、急かさずに待ってあげることで、だんだんと話せるようになり心を開いてくれます。
 また、ハローワークの職業訓練では、ひきこもりの方も受入れています。弊社に就職して、結婚し子供もできて現在幹部として務めている社員もいます。
 子どもたちから学ぶこともあり、社員教育にも繋がっていると思います。子どもたちを乗せてトラックを運転する際も、『きちんと一旦停止する』『横着しない』というように、子どもに教えながら仕事をすることで、社員自身も改めて基本に忠実であることを思い返す機会となっています。  
 社員の子どもが参加し、父親の仕事を目の当たりにしたことがきっかけとなり、子どもから話かけてくれるようになったと喜ぶ社員もいました(笑)

1度は挑戦する、1度は話を聞いてみる

Q 上司・同僚から認められる働き方・組織の中で上手くいく働き方とは?

 報連相は当然ですが、コミュニケーションが大切だと思っています。私にとって社員は家族のような存在ですので、朝の点呼は必ず行い、「今日は雨だから気をつけて」など、些細なことでも声をかけるようにしながら体調への気配りは意識して行っています。
 また社員だけでなく家族の生活にも気をつけています。家族が崩れてしまうと社員も崩れて仕事にも影響が出ます。「親の調子が悪い」「子どもがインフルエンザになった」などの家庭事情についても、なるべく把握し、協力するようにしています。

Qこだわってきたこと、工夫していることはありますか?

 社員一人一人と色々なことを話すことにより、勤務時間や仕事の配置を考え、精神的ストレスを少しでも取り除けるように工夫しています。社員には『毎日楽しい気持ちで会社に来て』と伝えているので、それが経済産業省の健康経営ブライト500の連続取得に繋がっていると思います。
 例えば、子どもが大学生になった社員には、長距離の仕事に配置し、1回あたりの勤務時間を増やす調整をします。また小さい子どもがいる社員には、上がり時間の早い仕事に配置し、夫婦で働いている社員はどちらかを早出にして午後5時までに保育園に迎えに行けるようにするなど、できる限り各家庭の状況を踏まえて仕事の配置を決めています。日曜日に子どもの試合があるときなども事前に伝えてもらえれば出来るだけ対応しています。そのため社員アンケートでは、97%が会社や社員に関するストレスはないと回答しています。
 また、弊社では新人の意見でも、『あの台車を買って欲しい』などの些細な提案等でもなるべく聞き入れるようにしています。結果的に却下にすることもありますが、現場のことは社員の方が先生です。常にいい情報があれば教えて欲しいと頼るようにしています。
 ただ、不適切な対応をしたときは、上層部等からすぐ注意します。『横断歩道で止まっていなかった』とか、市民の方にも常に何か見かけたら教えて欲しいとお願いをしています。『バレなかった』と思って、また繰り返されたら困るので、クレーム等があればすぐに指導します。

Qストレス解消方法やくじけそうになったときの対処方法はありますか?

 現在、西宮市商工会議所の議員をはじめ、様々な役職に就かせていただいているので、本業以外も含め充実した時間を過ごさせていただいています。一日同じ仕事をするよりも、分刻みで違う仕事をする方が、私にとっては気分転換やストレス解消になっています。くじけそうになることはあまりないですね。
 苦労も経験の一つなので「ピンチはチャンスだ」と思うようにしています。例えば、社員がバックミラーを割ってしまった時も、いつまでも引きずるのではなく、今後の事故防止のためにどうするか考える、次にどう活かしていくか、いつも前向きに捉えるようにしています。

Q今後の展望について

 令和7年1月からトラックを14台増車する予定ですので、春頃から人材の確保や社員教育等をしていきます。
 今の若い世代は運転免許を持っていない人が多く、トラックとなると免許を取得する人がほとんどいない状況です。大手の会社では輸送を飛行機や船、鉄道に移行しているところもありますが、各家庭まで届けるにはトラックが絶対に必要となります。給食事業も将来的にどうなるのか不安な面はありますが、年齢や体力に応じて長い間働けるという面で魅力を感じてもらえる会社にしていきたいと考えています。