インタビュー紹介
山元 弘生さん
兵庫トヨタ自動車株式会社
経営企画室・働き方変革室
副部長
誰もが性別の枠を越えられる組織を目指して
会社情報
兵庫トヨタ自動車株式会社
【所在地】神戸市中央区磯辺通4丁目2番12号
【事業内容】自動車販売修理業
【従業員数】1,067人(女性124人、男性943人(2019年4月1日現在))
誰もが性別の枠を越えられる組織を目指して
兵庫トヨタ自動車株式会社は、1946年に神戸に創立。 以来、「良きものを経て、なお良きものへ」を経営理念に、時代が求める最良の車とサービスを提供する傍ら、環境にやさしい自動車ディーラーとして地球環境保全活動への取組を積極的に推進し、2001年には全社・全店舗で「ISO14001」の認証を取得しています。
更に、最高のサービスを提供するには、働く社員自身が社への誇りを持ち、働くことに喜びを感じることが不可欠であるという考えから、2003年に改善推進室を立ち上げ、組織改革を進めています。
男性が9割を占める職場において、全力で仕事に取組まれながら、結婚・出産・育児を経験され、社内唯一の女性管理職としてご活躍されている山元さん。これまでの経歴や苦労、後に続く女性へのメッセージなどを伺いました。
仕事は続ける。ライフイベントを理由に仕事を諦める理由が見当たらなかった。
Q今までの経歴を教えてください。
高校生の時「大学進学か就職か」と進路を検討した時に、自動車業界で働く家族と母校の先輩の勧めで入社を決めました。同期の女性5名と経理に配属され、決して経理の仕事が好きだったわけではありませんが、目の前にある事務をコツコツとつみあげて、気が付くと19年を過ごしていました。
入社時の私のライフプランは「23歳寿退社」。定年まで働くつもりはありませんでした。勤務に関する調査票に「マネージャーへの昇進を希望しない」と書いて、上司から「それでは困るよ」と言われたこともありました。同期は25歳前後で結婚退職という道を選択していきましたが、私は結婚した時期が遅かったこともあり、ライフイベントが仕事を辞める理由になりませんでした。
上司に恵まれた状況で仕事を続け、人事を1年経験後、2002年に会社が、お客様第一主義を目指し、業務改善に取り組む事務改善活動に携わることとなりました。翌2003年には、営業活動全体の物流改善活動のための改善推進室が立ち上がりました。翌年、マネージャー(課長級)に昇進しました。管理職として、営業推進部、業務推進室等を経験し、昨年度から社員の能力開発と今以上に活躍できる仕事のしくみづくりを目的とした現職の働き方変革室の副部長として働いています。
Q唯一の女性管理職としての不安やプレッシャーは?
私自身が男性的なのか、特に不安を感じることなく、異性の部下ともうまくやりながら、常に自然体で仕事に取組んできました。ただ、唯一の女性管理職の下にいることに、部下が不安を感じることがないか、やりにくく思うことはないかを意識的に尋ねることもあります。幸い、不安に思う部下もいなかった様で(皆さんそう仰ってくださったので、その様に思っていますが)、部下の優しさと知識に支えられながら、今日までやってこられたという印象です。
勿論、女性初の管理職ですので、全ての方に問題なく受入れられた訳ではありません。営業推進部の時代には、「営業経験もない管理職なんて」と、心ない言葉を投げかけられたこともあります。ただ、そういった批判は軽く受け流し、求められたもの以上のことを成果として出そうと心がけるうちに、そういった意見は耳には届かなくなりました。もともと楽観的な性格ですので、プレッシャーを感じにくいのかも知れません。
家族の支えがあったからこそ実現した仕事と家庭の両立。
Q仕事と子育ての両立はどのようになされました?
私は、育児休業の制度化以前に、妊娠、出産を経験しました。当時は、結婚や妊娠時に退職することが一般的で、育児休業を取得して復職後に家庭と両立して働く土壌は整備されていませんでした。
そのため、女性の年長者は不在で、管理職の出産も前例のないものでした。ロールモデルがいなかったことから、どう進むべきか悩んだこともあります。不思議なことに、周囲には「山元さんは当然働き続ける」といった思い込みがあり、また、私自身も次に続く人のことを考えると辞めるという選択肢はなく、産前産後休暇終了後に職場復帰しました。復職後は、子どものことは全面的に実家に頼りながら、残業や休出を厭わず、仕事を再開しました。
子どもに対して罪悪感が無かったと言えば嘘になりますが、子どもにとっては、母が働いていることが普通で、日曜日に自宅にいると、「お母さんお仕事に行かなくていいの?お金入る?」と、心配されました。子どもの順応性の高さに助けられながら、何とかやってきました。
Q長く働かれる中でのご苦労や工夫は?
入社直後のわからないことだらけの頃、先輩社員に質問した時「わかろうとしなさい!」と厳しいことを言われました。それ以来「できない」を決して口にしないように心がけてきました。一旦「わかったふり」をしながら説明を聞き、あとで必死に調べて仕事を仕上げるスタンスを貫くことで、自ら学習して取り組む習慣が身につきました。その結果、求められる以上の落とし込みができるようになりました。
管理職になった今、部下に指示をするときは「何のためにその仕事をするのか」をしっかりとロジカルに説明した後は、進行管理も含めた大部分を部下に任せます。時には、私の思いと異なる結果もありますが、良いものは素直に採用しています。
また、フラットな関係作りを意識して、役職者と部下に対する態度を変えないように心がけています。この姿勢のおかげで、役職に関係なく良好な関係が築けていると思っています。
誰もが活躍できる組織づくりを模索中。
Q女性営業職が働き続けるために工夫していることは?
弊社の女性営業職の平均勤続年数は5年程度で、定着率が低いことが課題です。小売業の営業は女性に適した職種だと考えますが、弊社の販売方法が男性的であるが故に、女性の定着が難しいのではないかと思っています。
自動車購入時に妻の意見が尊重されることも多いので、女性目線での営業が重要であると認識しており、多くの女性が活躍し続けられる営業スタイルの確立を模索しています。女性営業職3名が育児休業から復帰しています。復職後は短期的に負荷の少ない仕事に転換するといった、長く働き続ける仕組みづくりを工夫しています。
Qどのようにして女性社員を育成していきたいですか?
昨年度、県の制度を活用して、弊社初の女性社員研修を実施しました。今年度は接遇研修を予定しており、今後は体系的に女性社員の育成と活躍を支援していきたいと考えています。ショールームに勤務する女性のやりがいを高めるために、職名を業務職からショールームスタッフに改称するとともに、業務のレベル認定制度を導入しました。自動車に対する知識レベルを認定し、段階が上がれば営業職に転換できることで管理職への道が開けます。
現時点で管理職候補が20名程度います。社内風土も「働き方変革」「女性活躍」に異を唱えることができない状況になっています。この波に乗って、すべての社員が性別の枠を超えて活躍できる組織作りを加速させたいと思います。
適度な自信を持ちながら取組むことが大切!
Q後に続く女性に伝えたいことはありますか。
適度に自分に自信を持って仕事に取組んでください。既に多くの女性が頑張っていらっしゃることから、今更「女性活躍」について語る必要はないと思いますが、自分を過信せず、常に自然体でいて欲しいと思います。自然体の中に自分の意思を持って毎日を積み重ねることで、結果は必ずついてくると思います。