インタビュー紹介

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桑名 好恵さん

桑名 好恵さん

フジッコ株式会社
顧問 女性活躍推進担当兼味富士株式会社担当
微生物の専門職から役員へ、女性社員にはあらゆる機会を飛躍のチャンスにしてほしい

会社情報

フジッコ株式会社
【所在地】神戸市中央区港島中町6-13-4
【事業内容】各種食品の製造販売
【従業員数】2,191名(フジッコグループ全従業員)

微生物の専門職から役員へ、女性社員にはあらゆる機会を飛躍のチャンスにしてほしい

 2010年に創業50周年を迎えたフジッコ株式会社は、昆布や豆、ヨーグルトなどを製造する食品メーカーです。同社で創業家を除いて初の女性役員に就任し、現在は顧問として女性活躍推進に尽力されている桑名好恵さんに、その働き方や取組についてお伺いします。

様々な経験が全て繋がる、役に立たないことはない

Q これまでのご経歴をお伺いします

 フジッコには平成2年に中途入社しました。大学卒業後は食品の分析機関に勤めていたのですが出産を機に退職しました。社会に接していたいという思いが強く、子供が1歳の時に短大の非常勤講師になりました。その後乳業メーカーで10年以上、ヨーグルトの分析や微生物の研究をしていました。時短勤務で子育てとの両立はしやすかったのですが、子供が中学卒業のタイミングでさらに微生物の研究・分析の経験を活かしたいと正社員としてフジッコに入社しました。フジッコでは主に納豆菌やナタデココ、カスピ海ヨーグルトの有用菌の選抜や商品開発に携わりました。その後、通信販売事業部長になり、その時期に取締役になりました。次にお客様相談室長になり、お客様と近い仕事にやりがいを感じました。通信販売事業やお客様相談室は今までの業務とは全く関係ないように思いますが、それまでの商品開発や研究の経験がお客様の声や要望を聞くという事にとても役に立ちました。全ての仕事は繋がっておりそれまでのキャリアは活かせると思いますので、どんな仕事でも興味を持って受けるようにしてきました。現在は顧問として、女性活躍や、味富士という贈答品部門の子会社の担当をしています。

Q 女性活躍担当としてはどんな取組をされていますか?

 フジッコでは現在、女性の管理監督職は、部長が1人、工場長が1人、課長が1人、係長は0人で主任が16人います。女性活躍推進法に基づく事業主行動計画では課長の女性比率を5年後に5.0%にすることを掲げていますが、課長になれる人材の育成がまだまだ進んでいないのが現状です。そこで、全国で勤務している女性主任の顔合わせをすることから始めました。また、女性活躍に関する講演の企画運営を主任に任せて実施しました。本年3月には女性職員を対象としたフォーラムを企画中です。 

オン・オフの切替えをうまくすることが、ストレスをためないこつ

Q 仕事と家庭の両立で工夫されたことはありますか?

 子供を産んだら仕事を辞める人が多かった当時、仕事をすることに夫は特に反対はしませんでした。ただし協力してくれるわけではなかったので、家事のやりくりなどは工夫して自分でこなしていました。食品の開発に関わる仕事をしていたので買い物や食事を作ることも積極的にとりくんでいたように思います。
 また、会社と家が1時間ほどかかるので、その時間を使って気持ちを切り替えるようにしていました。音楽を聴いたり本を読んだりして過ごすことでストレスの発散にもなっていました。ストレス発散方法としては、社外の人との関係を大事にして交流する機会を持つことも有効だと思います。

管理職になれば世界が広がる、勇気をもってチャレンジを!

Q 管理職になって良かったことはありますか?

 微生物の専門職として入社したので、管理職になるつもりは全くありませんでした。当社が東証への上場を機に女性管理職の必要性を指摘され、上司から声がかかったことが管理職になったきっかけです。時代に後押しをされたとはいえ、管理職になって、スタッフの時には見えていなかった世界を知ることができたことはおもしろい経験だと感じています。世の中の動きを知り会社全体の決定権に関わる場に参画し、会社の運営について発言できる喜びもあります。また、他社との交流も広がり今まで会えなかったような役職の方ともお話しする機会が得られ、とても勉強になります。 

Q 女性リーダーとして心がけていることはありますか?

 部下についてよく知ることです。それぞれの人が担当しているテーマが期限内に完結するために、それぞれの人にあったフォローや指導を考えるようにしています。私の上司がそういう方だったので、自然と学びました。上司に対しては、発言の理由を、時間をおいて考えて対応するようにしています。上司と部下では情報量も違うし、考えるべきことも違います。上司の発言に、言われた時は納得できなくても、時間をおいて考えてみたらその理由が分かるかもしれません。 

Q 女性の管理職がいない中、桑名さんがロールモデルにした方は?

 創業者の奥様で役員でもあった山岸英子さんです。おいしい商品を作ることを徹底的に追及される熱い想いに影響を受けました。管理職になった時に「一歩一歩、少しずつで良いから着実に」と言ってくださったのがとても励みになりました。
 また、ブルドックソースの池田章子社長は、お茶くみの仕事を経て社長になられた方で、どんな些細な仕事でも、やるならとことんやるという姿勢の方です。こだわりを持って物事を追求する情熱に感銘を受け、ぜひ女性社員に話を聞いてほしいと思い講演会にお呼びしたほどです。

Q 今後、管理職をめざす後輩の女性たちへメッセージをお願いします

 女性はまじめに考えすぎる人が多いように感じるので、もっと柔軟に考える訓練をすると良いですね。能力はあると思うので、もっと気楽に構えてみてください。また、ネットワークを広げていろんな人と接する機会をつくってください。
 今は働き方を変えようという流れがあって、恵まれた環境になりつつあります。どのように働くのかは自由ですが、今の環境を活かして仕事と家庭のバランスが取れた良い人生が送れるように心がけてほしいと思います。
 女性活躍とワーク・ライフ・バランスは一体のものです。みんなが定時に退社できれば、子育てや介護など家庭の事情を抱えていても管理職になりやすいでしょう。寧ろ、管理職になったら勇気を持って定時で退社するように心がけて欲しいですね。それはとっても難しいことで、上司の理解や取引先の理解も必要です。このことは工場や営業職に顕著で、食品業界の大きな課題ですが、まずはできる部署から取組を進めなければなりません。昇進すると、役職上、どうしても背負わなければならないことは出てきます。それでも自分の思うとおりにやってみてください。きっと周りの人が後押しをしてくれますし、私自身、後押しをしていくつもりです。自分が思う理想の上司となって後輩に未来を示していってほしいと思います。