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2018/08/22

「女性活躍推進と仕事の仕方~公務員として働く~」のパネルディスカッションを開催しました!

 平成30年7月5日(木)、神戸学院大学にて、同大学現代社会学部清原桂子教授が担当する「男女共同参画研究」の授業の一環として、「女性活躍推進と仕事の仕方~公務員として働く~」と題するパネルディスカッションが、今年度も開催されました。
 公務員として活躍する4名がそれぞれの職場や家庭での様々な経験について話した後には、参加した学生達との間で、活発な質疑応答も行われました。

・コーディネーター 松森 章子  兵庫県女性生活部長
・パネリスト    白川 智子  兵庫県企画県民部県民生活局芸術文化課長
          西村 いつき 兵庫県農政環境部農林水産局農業改良課参事
                (環境創造型農業推進担当)
          本田 英理  兵庫県警察本部生活安全部サイバー犯罪対策課警部補

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

◆兵庫県の男女共同参画の取組について
(松森部長)
 兵庫県では、男女共同参画について大変力を入れており、条例や計画のもと、知事をトップに推進本部を立ち上げ、全庁をあげて男女共同参画に取り組んでいます。県庁自らがモデル職場になるため、男女共同参画兵庫県率先行動計画(ひょうごアクション8)を作っており、県庁の中での女性の活躍推進・働きやすい職場作り等に関して具体的な数値目標を定めているところです。
 昨年、県の職員に対してアンケート調査を実施したところ、「男女共同参画が進んだ」と回答した職員が55%でした。6年前に同様の調査結果と比較すると、20%増加しています。
 「男女共同参画が進んだ」と回答した理由としては、「女性の管理・監督職が増えた」という回答が73%であり、6年前の調査結果と比較すると、30%増加しています。職場で女性の管理職がめずらしくないものとなってきており、県庁の中でも男女共同参画が進んだと職員が実感している様子が覗えます。

松森部長

松森部長

◆パネルディスカッション
Q 自己紹介をお願いします。
(白川課長)
 平成3年に県庁へ一般事務職として入庁しました。母親から一生できる仕事を選びなさいと言われ、公務員という仕事を選びました。
 数ある公務員の仕事の中でも地方自治体の職員は色々なことが体験できる職場であると言えます。県庁では、3年前後で異動があるため、一つのことを突きつめるというよりは、ゼネラリストとして様々なことを身につけていくので、多種多様な経験を積みたいと考えている人には向いている職場です。27年間働いてきた中で、職員課や総務等の内部管理の仕事を約10年間行い、議会事務局の仕事を5年、能力開発課・芸術文化課等の事業系の仕事を約10年間行ってきました。
 芸術文化課の仕事としては、芸術文化施設の管理、兵庫県文化賞等の表彰、地域での芸術文化活動に関する助成金等、大きな事業から小さな事業まで、様々な取り組みを行っています。
 職場には、3人の子どもを育ててきた女性職員や、現在子育て中のため、育児休暇で16時半に退庁する職員もいます。

白川課長

白川課長

(西村参事)
 大学進学の時に父親から家の役に立つ勉強をしてほしいと言われ農学部を選び、就職の際、学んだことを仕事に活かしたいと思い、兵庫県の農学職の採用試験を受けました。母親から、女性でもしっかりと自分の職をもち、自立していた生き方をしていくべきだと言われていたことも影響しています。
 兵庫県の農学職は、本庁や地方機関で勤務する職員、試験研究を行う研究職、農家の方と直接接して技術指導・経営指導を行う普及指導員の3つに分かれ、私は採用後、普及指導員となり、但馬の農業改良普及センターを中心に働いてきました。兵庫県には今約8万戸の農業者がおり、技術・経営指導を行っています。但馬地域でピーマンの産地振興、養父市の有機野菜の産地育成、コウノトリ育む農法の開発・普及を行いました。地域おこしでは出石の城下町での農産物直売所で観光客に地元の農産物を販売するシステムを作りました。現在は、環境創造型農業を推進する仕事をしており、例えば、全国有機農業フォーラム等なども行っています。
 採用面接では、「結婚・出産すると辞めてしまう女性職員はとりたくない」とかつて面接官に言われたことを覚えています。やめたいと思うこともありましたが、「負けるものか」という思いで頑張ってきました。

西村参事

西村参事

(本田警部補)
警察官として、利殖商法、ヤミ金等の生活に密着した詐欺事件捜査に長年取り組んできました。現在は、サイバー犯罪対策課で啓発担当として働いています。一度、民間企業に就職した際に、中高生の校外学習で子ども達と関わることがあり、その中での出会いから自分は問題を抱えた人にも向き合えるのではないかと感じ、警察官を目指しました。

本田警部補

本田警部補

Q やりがいを感じたこと、特にうれしかったことは何ですか?
(白川課長)
 仕事がうまくいったとき、自分の思ったことをきちんと相手に伝え、それが支持されたときにやりがいを感じます。「仕事を一生懸命やることでしか仕事のやりがいや自信を得られない」と尊敬する上司から伝えられてきましたが、まさにその通りで自分が一生懸命やってきたことがうまくいくとやっていてよかったなと感じます。

(西村参事)
 農学職の中でも、普及指導員は直接農家の方や地域の方と関わる機会が多いので、直接感謝の言葉をかけてもらえることも多いです。また、自分の仕事が、地域を変える場面に接したときはやってよかったなと感じます。

(本田警部補)
 犯人が話さない、証拠も乏しい事件を捜査していく中で、様々な証拠を積み上げて、被害者の気持ちに報いること、犯人が自分の罪に向き合えるようにさせることができたときにはやってよかったなと感じます。それができなかった時にはその悔しさをバネに次につなげていきます。
 また、県の職員、県を超えた全国の警察官等、仲間が非常に多いということが心強いです。平成7年の阪神・淡路大震災の時にも、他府県の警察の方には救われました。

Q 仕事をする上で大変だったこと、苦労したことは何ですか?
(白川課長)
 振り返ると大変だったことは忘れてしまうことも多いです。勤務地が家の近くであったり、母親が近くに住んでいたので子どもの面倒をみてもらえたりと、環境に恵まれていました。また、同期の採用職員が約200人と非常に多い中でも、仕事を辞めた人が少なく、同期の女性職員の9割ほどがまだ仕事を続けていることからも、辞める理由がない職場ではないかと思います。

(西村参事)
 仕事で苦しいとき困ったときには、いつも自分がもらっている給料を農業で稼ごうと思ったら、どれだけ大変かということを考えます。
 3人の子どもがいて、子育ての際には同居している夫の両親に手伝ってもらいましたが、その後両親の介護をすることとなったときは大変でした。仕事をやめようか考えたときもありましたが、常にいつ仕事をやめても悔いのない仕事をしたいと思ってきました。
 また、両親が亡くなった後には、単身赴任をすることになりました。受験時期の子どもにとって、大切な時に母親がそばにいないことになり、家族には迷惑をかけたと思っています。

(本田警部補)
 警察官は時間が不規則であり、子どもが小さい頃に捜査の仕事をメインにしていたので、子どもが寝ている間に出勤し、また寝ている間に帰ってくることも多かったです。
 子どもの音楽会にも、行くと約束しながら、結局行けないこともあり、子どもの気持ちを考えると辛かったです。子どもに寂しい思いをさせたり不自由な思いをさせたりしているからには、それだけの仕事をしなければならないと思えました。
 子育てに関しては、両親や学校の先生にも助けられました。子育てでやりそびれたことに対する悔いもありますが、学校の先生から「子育てはいかに人の手にゆだねるかということ」と言ってもらえたことに救われました。自分一人だけでなく、色んな人の力を借りることで、仕事と子育ての両立をすることができるのではないかと思います。

Q 大学生の皆さんへのエールをお願いします。
(白川課長)
 これから就活をむかえ、大変な時期になると思いますが、自分を掘り下げる機会として考えて、前向きに取り組んでほしいです。
 兵庫県が求める職員の能力は「バイタリティ」と「行動力」であり、それを面接でいかに表現するかが大切です。その際には、自分の経験をしっかりと語る必要があります。面接に向けて、自分が今まで何をしてきたのか、どうしたかったのかを掘り下げておくべきだと思います。

(西村参事)
 公務員というのは、自分や会社の利益を求めるのではなく、県民の幸福を求め、社会的な使命感をもって働くことができる素敵な仕事です。私の仕事は、農家の皆さんからの「ありがとう」の言葉が働く原動力であり、やりがいがある仕事だと思っています。
 また、学びたいと思えば学び直すことができる環境であり、社会人になってから大学院に進学し、修士号・博士号を取得しました。やろうと思えば色んな挑戦ができる職場です。
 公務員には、「まじめさ」が求められます。皆さんにも、しっかりまじめに勉強してほしいです。

(本田警部補)
 今目の前にいる、悲しんだり苦しんだりしている人をどのようにしたら救えるのかということをしっかりと考え、自分の力、自分の属する組織の力で最大限できることを考えています。
 恐れずに色んなことに挑戦すべきです。必要な力は後からついてくると思います。

(松森部長)
 女性が働くということについて、今よりも周囲の理解がなく、制度・環境も整っていない中で、仕事を続けてこられた方の話を聞けたことは、大学生の皆さんにも参考になるかと思います。
 大学生の時期というのは、自由な時間が多いので、色んなことを考え悩みながら、将来のこともしっかりと考えてほしいです。同じ県庁の中に入ってもどんな仕事をするかによって環境は全く違うので、まずは思いきって飛び込んでほしいと思います。チャレンジすれば必ず道は開けるので、頑張っていただきたいです。

◆学生との質疑応答
Q 公務員で女性への差別があると感じることはありますか?
(白川課長)
 最近では、男性の意識も高くなっているため、差別を感じることはないです。自分が入庁した頃は、外に会議にいっても、女性職員は添え物扱いを受けていました。当時は自分が主担当の業務に関して説明をしても、相手の方が自分のことではなく男性職員のほうを見ながら話をしていることも多かったです。

(西村参事)
 県に入ったころは、女性に対する差別を感じました。同期で入った職員でも、女性は主任や主査になるのが男性よりも2、3年遅れるものでしたが、当時は、自分も周囲も納得していました。
 長男を出産した時には育児休暇ではなく育児欠勤をとり欠勤扱いをされましたが、長女の時は10ヶ月の育児休暇を取得し、次女の時は12ヶ月の育児休暇を取得する予定でした(仕事の都合で早めに復帰)。年を重ねるごとに女性が働きやすい職場になってきているように感じます。
 単身赴任をすると、離婚をしたのか、結婚をしていないのか、と言われるのが嫌で、単身赴任をしてから指輪をつけるようになりました。
 今は、民間と比べると公務員は女性への差別が少ないのではないかと思います。

(本田警部補)
 警察は基本的には男社会ですが、自分が警察に入った頃から、「女性の特性を活かした配置を」という表現がされないようになりました。私の長く在籍していた生活経済課という部署では、私が初の女性捜査員として配置されました。
 公務員は、民間の中でも制度がまだ整っていない所と比べれば、少し早く男女共同参画が進んでいるのではないかと感じます。

(清原教授)
 働き方改革関連法が成立し、来年の4月以降に施行されるので、民間においても公務員においてもさらに変わっていくと考えられますが、意識が変わらないところもあるので、その中で改善に取り組みながらしなやかに生きていく必要があります。女性が働きやすい職場は、男性が働きやすい職場でもあります。

Q 20~30年前と今を比べると、男女共同参画が進んで環境も変わってきたと思いますが、実際に働く中で環境の変化をどのように感じてきましたか?
(白川課長)
 かつては、上司は皆男性で、職場の中で男性上司が煙草を吸っていることも多く、妊娠中もそんな環境の中で仕事をしていました。今と違って、お茶くみをするのは女性の役割で、自分の仕事の手をとめ、急いでお茶を入れることもありました。
 女性職員にも、「自分はこんな働き方でいいのか」と考える人が増え、女性の意識も変わってきていると思います。

(西村参事)
 職場環境は激変したように感じます。セクハラ、パワハラは、昔は当たり前のようにありましたが、今ではほとんどなくなり、あったとしても、周りが批判する環境になってきています。
 就職してから男女差を感じることは多かったですが、今ではそのような差を感じることは少なくなってきていると思います。

(本田警部補)
 女子トイレがなかったり、女性が仮眠する場所がなかったりすることもありましたが、今では様々な部分が改善してきており、先輩方が頑張ってきてくださったおかげで今があると思います。

Q 【本田警部補への質問】阪神・淡路大震災の時には、どのような活動をしましたか?
(本田警部補)
 阪神・淡路大震災の発生当時は、寝間着のまま家の近くの警察署に急いで出勤しました。警察であっても情報が入ってこず、何が起きたのかも把握できない状況でしたが、がれきの中で救助者の捜索を行ったり、交通整理を行ったりしました。
 当時自分に子どもがいたとすれば、結果としては行かなければなりませんが、子どもだけを残して仕事に行けただろうかと考えることがあります。

Q 公務員は産休や育休をとりやすい印象がありますが、実際に取得する際に支障があったり、躊躇したりしたことがありましたか?また、復帰後に苦労したことがありますか?
(白川課長)
 育児休業は最大3年とることができ、女性職員はもちろん男性職員でも取得しています。最近では、子どもができると当然に育児休業や休暇を取得すると考えられているため、しっかりと職場全体で支えていこうという意識があります。
 今では育児に専念できる環境にありますが、職場に対して当たり前に休むという態度をとるわけではなく、しっかりと引き継ぎを行い、仕事を誰が見ても分かりやすい資料にまとめておくなど、感謝をもって取得するよう心がけてほしいです。

(西村参事)
 専門職が育児休業を取得するためには、その資格を持った人を代替職員として探さなければならなかったため、昔は非常に苦労しました。今では、資格がない人に産休代替を任せることもできるので、取得しやすい環境となっています。

(本田警部補)
 自分自身は上司・同僚等の環境に恵まれましたが、同世代の人にはかつて職場の上司に出産について難色を示された人もいました。
 今では、警察官でも3年の育児休暇をフルで取得する方、介護休暇を取得する方、子どもの送り迎えが必要だから時短勤務にする方、再任用で働く方等色んな働き方をする人が増えてきたので、お互いに自分の事情を言いやすくなってきました。

(清原教授)
 公務員だけでなく、民間企業も男性の育児休業所得率の目標数値を掲げています。また、上司が部下に休みをとらせてあげることができたかどうかを、上司の勤務評価に反映させる企業もあります。

Q 【本田警部補への質問】阪神・淡路大震災の際にも色々な仕事をされていたと聞きましたが、もし家族が大怪我をした場合や、亡くなった場合にも仕事を優先しなければならないのですか?また、災害時の仕事は、仕事の部署によって差はあったりするのですか?
(本田警部補)
  当時は、家族が亡くなった方もおり、それを振り切って出勤してきた方もいました。同じ職場の方で肉親が亡くなった警察官は、上司の配慮により、帰らされていました。しかし、場合によっては、現場に向かわなければならないこともある仕事です。

(清原教授)
 公務員に限らず、民間企業であっても、企業の仕事を復旧・復興するために災害時などの非常時にも行かなければなりません。
 制度があればいいわけではなく、制度を運用するのは1人1人なので、上司や同僚が声かけをしていくことが大切です。制度が整っても、利用しにくい雰囲気の職場はまだまだあります。

Q 公務員は民間企業より堅いイメージがありますが、身だしなみ等の部分で、それほど堅くはないという部分がありますか?
(白川課長)
 身だしなみに関しては、夏場は特に軽装で働いており、TPOをわきまえた服装なら大丈夫です。

(西村参事)
 民間企業の研究職として働く長男が、Tシャツとジーンズで通勤しているのを見ると、公務員の服装は堅いのかもしれません。

(本田警部補)
 昔に比べてかなりゆるやかな対応となっていますが、さすがにTシャツと短パンは不可です。

(清原教授)
 TPOをわきまえた服装ということですね。

Q  どれくらいの割合の男性が育児休業を取得していますか?また、男性が育児休業を取得すると周囲はどのような反応をしますか?
(松森部長)
 県庁職員では、男性の育児休業取得率は1.7%しかありません。県としては、男性職員にも育児休業をどんどん取得してほしいので、妻が妊娠したことが分かった男性職員に対しては、上司と面談をして、休業・休暇取得を促す制度もあります。また、育児休業ではなく、育児休暇制度を取得する男性職員は7割程度と増えているので、意識は変わってきていると考えられます。

Q  今後、女性活躍をさらに進めていく上で、1番必要となることは何だと思いますか?
(白川課長)
 社会的にも、県庁においても、男性職員の意識は変わってきています。次は、女性自身の意識を変えていく必要があるのではないかと思います。仕事に対する意識や家庭のこと等の、自分のライフプランを早いうちからよく考える必要があると思います。

(西村参事)
 環境がよくなってきたのは、制度の充実が背景にあると思います。いい制度があっても使用しなければ意味がないので、使用する側の意識改革をしていく必要があると思います。

(本田警部補)
 部下からは言い出しにくいので、上司から積極的に育児休業等の制度を使うように呼びかけていくことで、使っていいものなのだと思える雰囲気をつくっていくべきだと思います。

(松森部長)
 私が県庁に入った頃は、残業や休日出勤が当たり前でしたが、今では、ワークライフバランスが進み、女性が働きやすい職場は男性も働きやすいという理解が深まってきています。
 各分野で女性の管理職が一定数配置され、身近で女性が活躍する状況にしていけば、周囲の意識も変わってくると思います。

Q  最後に一言、お願いします。
(白川課長)
 もし、兵庫県を受けるならぜひ合格していただき、一緒に働きたいです。仕事はたくさんあるので、色々な分野で活躍してほしいです。

(西村参事)
 仕事や職場は自分磨きの場所なので、それぞれの希望した職場で働き、自分磨きをして下さい。

(本田警部補)
 必ず仕事でも家庭でも行き詰まることはあるので、仕事と家庭と、もう一つ自分の心を満たせる第三の場所を今から用意しておいて下さい。